表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生ヒロインは爆破犯、悪役令嬢は被害者だった』 —二度も殺されてなるものか—  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/38

“鐘の刻”

王都の夜は、異様なほど静かだった。

風ひとつなく、空気が張り詰めている。

そして――沈黙を裂くように、神殿の塔から低く重い音が響き渡った。


SFX:鐘の音「ゴォォォン……」


その音は、時を告げる鐘ではなかった。

まるで世界そのものが、何かを呼び覚ますような響き。

石畳がかすかに震え、空気の奥に見えぬ波紋が広がる。


カメラは天上から俯瞰し、雲を抜けて神殿の尖塔をとらえる。

その中心――古の転輪を模したステンドグラスが、月光を受けて淡く脈打っていた。

七色の光が床に降り注ぎ、輪のような模様を描き出す。



空は澄み、月は冷たく輝いていた。

だが、その光の奥で、何かが再び“蠢く”。


微かに、空気が“呼吸”する音がする。

まるで神の観測装置が、永き眠りからゆっくりと目覚めるように。


神殿の鐘が再び鳴る。

その音に導かれるように、世界の奥底で歯車が――動き始めた。



神殿の中央、白大理石の床に月光が降り注いでいた。

ミリアはその光の中心に立つ。

背後のステンドグラスが、呼吸するように淡く脈動し――まるで意識を持つかのように、彼女の背を照らしている。


対岸、闇に沈む祭壇の前。

そこに、リカの影が静かに形を取る。

光と影――それは決して交わらぬはずの二つの位相。

だが今、その境界がゆらりと溶け出していた。


ミリア(祈るように):「私は、世界を救う者。」

リカ(静かに):「私は、その“救い”に殺された者。」


二つの声が重なった瞬間、空気が震える。

ステンドグラスの表面を光が走り、亀裂が一本――そしてもう一本、音もなく広がっていく。


SFX:微かな破砕音「ピシ……ピシィ……」


色とりどりの光が砕け散り、宙に舞う。

それはまるで、神の記録が崩壊していく瞬間のようだった。

床に映る七色の光が、ゆっくりと螺旋を描き始めた。

最初はわずかな揺らめき――だが次第に、その輪は脈動を持ち、まるで心臓の鼓動のように規則的なリズムを刻む。


ミリアの足元に浮かび上がる光輪。

リカの影にも、同じ形の円が重なっていく。

それはただの光ではない。

“神の観測装置”――転輪の影が、現実層に干渉を始めた証。


SFX:低い共鳴「ヴォォォン……」


風はない。

だが、二人の髪がふわりと舞い、衣が波打つ。

空気そのものが、見えぬ力によって震えていた。


神の声(無機質に):「観測、継続中。――転生因果、再始動。」


その言葉と同時に、天井のステンドグラスが閃光を放ち――次の瞬間、粉々に砕け散る。


SFX:破砕音「ガシャアァァァン!」


砕けた光片が、羽のように空を漂う。

金、青、紅――数え切れぬ断片がゆらめきながら降り注ぎ、神殿全体を幻想的な輝きで包み込む。


リカとミリアの瞳に、降り注ぐ光が映る。

それは救いの光か、それとも新たな審判の光か――誰にも分からなかった。

降り注ぐ光片の中で、

ミリアの瞳が淡く白く輝き、リカの瞳は深い闇を湛えた黒へと染まる。


その光と影の対比は、まるでこの世界の理そのものを象徴していた。

二人は互いに向かい合う――神の意志と人の意志。

救済と断罪。

相反する存在でありながら、同じ“螺旋の中心”に立つ者たち。


ミリアの胸の奥に、微かな痛みが灯る。

それは懺悔でも恐れでもなく、ただひとつの問い。


ミリア(心の声):「私が信じた神は……本当に“救い”をもたらしたの?」


リカは静かにその視線を受け止める。

光の粒が頬をかすめ、彼女の瞳の奥で何かが燃え上がる。


リカ(心の声):「もう、誰も殺させはしない。

 神の名を借りた救いのもとに――真実を暴くために。」


二人の間を隔てていた光が、ゆっくりと揺らめき、溶け合っていく。

床に映る二つの影が――再び重なった。


SFX:低い共鳴「ドクン……」


世界がわずかに脈動する。

その瞬間、神殿の空気が息をのむように静止した。

光と闇が交差する地点に、“新しい因果”が生まれ始めていた。

神殿が低く唸りを上げた。

石の床が振動し、柱が軋む。

空気そのものが脈動し、光と音が一体化して世界を震わせる。


やがて――床下に金色の紋章が浮かび上がる。

幾何学的な輪が重なり合い、中心でゆっくりと回転を始める。

それは“転輪”。

神の観測と再構築を司る、世界の心臓そのもの。


SFX:振動音「グゥゥゥン……」


空間全体に無数の光線が走り、天井へと伸びる。

ステンドグラスの残骸がその光を受けて輝き、砕けた破片が星のように散る。


そして、重なり合う“神の声”が響いた。


神の声(多層的に):「再構築プログラム、フェーズ3へ移行。

 ――観測の目的:『覚醒』。」


その言葉と同時に、転輪から奔流のような光が立ち上る。

光はまるで意思を持つかのようにミリアを包み、彼女の白い聖衣が黄金の輝きに染まっていく。

その瞳に浮かぶのは、神の意志か、それとも恐怖か。


リカはその光景を見つめながら、静かに一歩踏み出した。

彼女の周囲には闇が渦を巻き、黒い風が衣を翻す。


ナレーション:

光が昇り、闇が立つ。

救済と断罪――二つの力が、完全に分かたれる瞬間だった。


天へと昇る光の輪。

地へと沈む黒の影。

その境界で、二人の視線が交錯する。


そして、世界は――胎動を始めた。



ステンドグラスが、ついに崩れ落ちた。

砕けた光片が無数の流星のように降り注ぎ、神殿全体を覆う。

その一つひとつが、まるで神の記録――失われた観測データの断片のように、儚く輝いては消えていく。


俯瞰の視点。

天井のない空から見下ろすと、光と影が渦を巻いていた。

その中心に、ふたりの姿。


ミリアは白光の中に立ち、静かに目を閉じる。

その輪郭が淡く透け、やがて光そのものに溶けていく。


リカは対照的に、闇の渦の底でゆっくりと目を開く。

金の瞳が、崩壊する世界をまっすぐに見据える。

それは絶望ではなく、始まりを見つめる者の光。


ナレーション:

「救いと断罪、その境界に立つ二つの魂。

 運命は今、胎動を始めた。」


沈黙ののち、空間に無機質な文字列が浮かび上がる。

淡い光の粒が並び、ひとつの“観測ログ”を形成していく。


【観測ログ:No.000211】

状態:再構築フェーズ3へ移行。

対象A・B――因果リンク、再接続完了。

記録:光と闇、統合試行中。

結果:観測続行。


最後の文字が静かに消える。

ただ、世界のどこかで――

微かな心音のような“鼓動”が響いていた。


それは、運命の胎動。

終焉ではなく、次の章の“始まり”を告げる音だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ