4。みんなでわいわい
「こんばんは。」
目の前には五人の男女が並んで立っている。
誰もが主人公のように輝く服を身にまとって、整えられた髪や顔などのお陰か、それとも彼らが発する雰囲気のせいなのか。
とても、偉い人達に見える。
見た目はみんな私と似たくらいだけどね。
「左からノア、イライザ、アデラ、フィン、オスカです。さ、こちらは新しい聖女様の鞠絵様だよ」
なんかみんな、名前がどこかで一回は聞いた事があるような単語だな。偶然かな。
「初めまして、ノアです」
「イライザでーす」
「アデラです」
「フィンです」
「オスカです。今後よろしくお願いします」
男達はまぁまぁだけど、何故か女達にかなり熱い視線を感じられる。やっぱり尻尾が狙いなのか。
ロザリー姉妹と似た視線だ。
「神崎鞠絵です。」
取り敢えず、ぺこっと。頭を下げて挨拶をする。それにつられて二人がまた私に挨拶した。
左から二番目と四番目の子だから、イライザとフィンなんだろう。
人が多いと名前を覚えるのも大変だな。
「詳しい話しはパーティーの中で交わしましょうか。それでは、始めますよ」
「はーい」
始めるって言葉と同時に、みんなそれぞれ好きな人と一緒にテーブルに座り始めた。
9人しかないのにそこでまた割れるのか。
まぁ、9人は流石に一緒にいると騒がしいか。
「ささ、聖女様。私と一緒に行きましょう」
私はロザリーに引かれて、王子様と多分イライザがいるテーブルに呼ばれた。
「パーティーはみんなと親睦を深める為の場所なんですよ。だから、今はイライザと仲良くなってみましょう。頑張ってくださいね」
そのままイライザの隣に私を座らされたロザリーは、どっかに行ってしまった。
食べ物を取りに行ったみたい。
「聖女様、名前で呼んでもいいかな?鞠絵って」
「いいよ。私もイライザでいい?」
「もちろん!」
なんか、ゲームのキャラクターみたいだね。元気いっぱいで、場の雰囲気を盛り上げてくれて、見ていて微笑ましくなるキャラクター。
まぁ人間だけど。
「鞠絵様は得意なのとかある?あたしはこう見えて剣術が得意なんだ。学園ではいつも学年トップを逃さいのよ」
そう言って座ったまま剣を振るように手を動かすイライザ。よくわかんないけど、そうみたい。
「私は…ん、マッサージとか?」
「マッサージ?固まった体を解すマッサージ?」
「うん。それ。」
「えー意外」
目をぱっと見開いて、どう見ても驚いた感じの顔と体の動きをするイライザ。
行動も声も大きいね。
「じゃあじゃあ、後でマッサージ頼んでもいい?あたし最近肩が固まっちゃってさぁ、腕を使う時ちょっと違和感を感じるの」
「いいよ。」
「あと足も!走る時太ももの方が余計に疲れちゃうの。マッサージでなんとかなるのかな」
「なると思うよ。」
めっちゃ体育系だな。声とか行動とか悩みとか。
元気いっぱいで微笑ましい。
「ひひ、じゃた約束だよ?」
「はい、約束。」
こういう子あったねぇ昔。
「じゃあ食べようか。鞠絵様は好きな食べ物とかある?あ、まだここの料理とかあんま知らないのか」
「私お肉ならだいたい好きだよ。」
「肉ねぇ、わかった。ちょっと待っててね」
ロザリーが帰って来るのを見て、イライザが椅子から起きて行ってしまった。
どこに行くのか見てみると、肉だらけのテーブルの前に立って、皿にめいっぱい肉を詰め込む。
礼儀とか守らなくてもいいのかここ。
「ただいま、聖女様。イライザとは上手くいったと思いますか?」
「まだちょっとだけ話しただけだから、わかんない。」
「ふふ、それもそうですね」
ロザリーが私の前に皿を置いて、隣に座った。さっきまでイライザが座ってたとこなのに。
席が変わっても大丈夫なのかな。
「さぁ聖女様、お魚は好きですか?多分好きだと思いますよ。食べてみましょうね。はいあーん」
「あーんっ。」
うわ、めっちゃいわしの味がする。てかいわしじゃないかこれ。味も食感も同じ過ぎ。
「美味しいでしょう?私も好きなんですよこれ」
慣れた味だからあんま抵抗感はないな。
「もう一個行きますよー」
「あんっ。」
むしろ慣れた味だからもりもり食べれるかも。
「あはは、可愛いですね本当…猫みたいです」
「にゃあん。」
「あはっ♡」
ここの人ってみんな猫好きのようだ。猫の鳴き声を真似するとその瞬間、みんなの視線が私に集まる。
ちょっと怖いなこれ。
もしかしてさっきもこうだったのか。
「今の鞠絵様なの?」
イライザが来た。
「そうだよ。うちの聖女様の声なの」
「完全に猫だったけど」
あー……フィンも来た。アデラだった子も来た。後は…オスカだったっけ。
みんな私の周りに集まってじーっと。私を眺める。
「どうしたの。」
「可愛い鳴き声が聞こえたので、集まりました」
この子誰だっけ。初めましてって言ってた子だけど。
あ、ノアだった。
「聖女様が猫の鳴き声を出すと、周りの人が集まるのがこのパーティーのルールなので、みんな集まったのですよ鞠絵様」
何そのルール。
「そういう訳で、もっかい鳴いてください。それもルールなのですよ」
なにそのルール。意味わからん。
「さぁ、鳴けっ」
「……にゃあん?」
「なんか違うね」
「さっきみたいに、もっと可愛く鳴いてください聖女様。じゃないとみんな元の席に戻れませんよ」
なんて理不尽なルールなんだこれは。
する側もされる側も嫌……なんか、みんなお目目がきらきらしてるね。期待してるのかな。
みんな変な趣味持ってるな……本当。
「にゃーん。」
この一回で終わらすつもりで、精一杯。野良猫達が甘える時を思い出してそれに似せてみた。
なるべく可愛く。猫みたいに。
「いいですねぇ。その勢いでもう一回言いましょう?二回鳴く事は楽しめって意味なんですよ」
絶対嘘だこれ。みんなで私をからかう為にやってるのに違いない。
「にゃん。」
「うふふ♡もっかいお願いします」
ほら嘘じゃん。
ただ私の猫の真似が聞きたいだけだよ。