行方不明の妹が見つかった
先日、母から行方不明だった妹が見つかったと連絡が来た。見つかった場所、経緯を聞かされ妹のいる病院へと向かった。重度の熱中症により脳が損傷され妹は寝たきりになっていた。
病室に入ると4床ベッドがあり、一番奥の右手側に母の後ろ姿が見えた。近付いて声をかける。
ベッドの上の妹の黒い瞳、目の端には涙が一筋だけ垂れている。喋りかけても反応はありませんが聞こえています。と医者は言っていた。
発見された時妹の部屋にクーラーはなく、この熱帯夜に扇風機と濡れタオルだけで涼をとっていたらしい。畳の上にせんべいみたいに薄い布団を敷いてぬるい風を浴びながら体を休め、眠り、そしてその間に妹の脳は壊れていったらしい。
妹とは絶縁状態にあり会わなくなって何十年か、分からなくなっていた。
私が高校卒業する頃?いや、専門にいた時からかな。
幼い頃から仲が悪く私を避けた妹は、思春期になり母を避け、そのうち家を出て父と連絡を取り合っていたがまた父の事も避けるようになり音信不通になった。
妹は幼い時から癇癪やわがままがひどく、万引きやいじめをしたりして、高校に上がるとつかれたように急に陰気になった。
大学もすぐ辞めニートになったので、母からも嫌われていた。私も嫌いだった。
母はベッド横で辛そうな顔をしたり妹に少し声をかけたりしている。
私も声をかけてみたりすると妹の目が濡れて、少し後に目尻からこぼれる。
泣いている、少し声に力を入れて大丈夫だよとか言ったり名前を呼んだりしてみる。するとまた涙がでたように見えて、その様子に母が笑顔のような悲しいような顔をする。
おかあさん、この子はほんとにどうしようもないね、迷惑ばっかだね。と母に言うと、ほんとにねそうだねと、わざとっぽくため息をつく。うんこ製造機だよ、と母が苦笑いを作って言う。
さっきから心臓がくすぐったいような感覚で面白い気持ちがしていたので、ついに私はやっぱり面白くなってきてしまって、うんこ製造機笑こいつがニートの時のやつね笑と、語尾を上げて母の会話にノる。
母は質素ないかにも病院にありそうなスツールにすわって、ベッドの頭の方にいる。私は妹の胴の辺りの位置で母の斜め後ろくらいに立って妹との間に少し距離を取りながら見下ろしている。
妹はまた多分泣いている。