表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

行方不明の妹が見つかった

作者: 沙那

先日、母から行方不明だった妹が見つかったと連絡が来た。見つかった場所、経緯を聞かされ妹のいる病院へと向かった。重度の熱中症により脳が損傷され妹は寝たきりになっていた。


病室に入ると4床ベッドがあり、一番奥の右手側に母の後ろ姿が見えた。近付いて声をかける。

ベッドの上の妹の黒い瞳、目の端には涙が一筋だけ垂れている。喋りかけても反応はありませんが聞こえています。と医者は言っていた。


発見された時妹の部屋にクーラーはなく、この熱帯夜に扇風機と濡れタオルだけで涼をとっていたらしい。畳の上にせんべいみたいに薄い布団を敷いてぬるい風を浴びながら体を休め、眠り、そしてその間に妹の脳は壊れていったらしい。


妹とは絶縁状態にあり会わなくなって何十年か、分からなくなっていた。

私が高校卒業する頃?いや、専門にいた時からかな。

幼い頃から仲が悪く私を避けた妹は、思春期になり母を避け、そのうち家を出て父と連絡を取り合っていたがまた父の事も避けるようになり音信不通になった。


妹は幼い時から癇癪やわがままがひどく、万引きやいじめをしたりして、高校に上がるとつかれたように急に陰気になった。

大学もすぐ辞めニートになったので、母からも嫌われていた。私も嫌いだった。


母はベッド横で辛そうな顔をしたり妹に少し声をかけたりしている。

私も声をかけてみたりすると妹の目が濡れて、少し後に目尻からこぼれる。

泣いている、少し声に力を入れて大丈夫だよとか言ったり名前を呼んだりしてみる。するとまた涙がでたように見えて、その様子に母が笑顔のような悲しいような顔をする。

おかあさん、この子はほんとにどうしようもないね、迷惑ばっかだね。と母に言うと、ほんとにねそうだねと、わざとっぽくため息をつく。うんこ製造機だよ、と母が苦笑いを作って言う。

さっきから心臓がくすぐったいような感覚で面白い気持ちがしていたので、ついに私はやっぱり面白くなってきてしまって、うんこ製造機笑こいつがニートの時のやつね笑と、語尾を上げて母の会話にノる。


母は質素ないかにも病院にありそうなスツールにすわって、ベッドの頭の方にいる。私は妹の胴の辺りの位置で母の斜め後ろくらいに立って妹との間に少し距離を取りながら見下ろしている。

妹はまた多分泣いている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ