シュレディンガーの部屋
「執筆部屋」
そう呟いた瞬間、視界が一瞬にして暗転した。まるで世界がリセットされたかのように、すべてが真っ黒に塗りつぶされる。次の瞬間、光が広がり、気がつくと見知らぬ部屋の中央に立っていた。
部屋は木造で、どこか温かみを感じさせる造りだ。奥には半円形の机が置かれ、その向こう側には、年季の入った皮張りの椅子が堂々と正面を向いている。
――ご主人様!初めまして!こちらです!
突如として、どこからともなく可愛らしい声が響く。
「ん? え、どこから……え、えええ!?」
声のする方――部屋の隅に視線を向けると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
天井の角に、メイド服を着た黒髪ロングの猫耳美少女が、尻尾を振りながら壁に張り付いている。
「……あのー、これは一体どういう状況なのでしょうか?」
呆然としつつも、彼女を見上げる。いや、正確には斜め上から覗き込んでしまった。
(……黒のレースパンティ……見えてる……。)
予想外の角度からの視界に、思わず思考がフリーズする。
「にゃにゃ、それはですね!」
彼女は嬉しそうに尻尾を揺らしながら続けた。
「眩しい光にびっくりして、壁にしがみついたら爪がめり込んじゃって……そしたらご主人様だったので嬉しいです!」
「……うん、なるほどね。とりあえず落ち着こうか。えっと、自分で降りられない?」
「はい……。まだ未熟者で、爪の制御ができなくて……その、できれば下ろしてほしいです……。」
困ったように上目遣いでお願いされる。
(ちょっと待て、このアングル……尻尾のせいで、お尻のラインがめちゃくちゃ強調されてるんだが!?)
透き通るような白い肌に、形の良い桃尻がこれでもかと主張している。危険すぎる光景に、股間が熱くなるのを必死で押さえ込んだ。
(いかん、いかん、健全に下ろすことだけ考えよう!)
「よし、待ってて。椅子を……よいしょっと。じゃあ、持ち上げるね?」
そう言いながら、彼女の腰にそっと手を添える。
「にゃんっ‼︎」
「あ、ごめん! くすぐったかった?」
「は、はい……。あの、その……尻尾、どかすなら優しく……」
「うん、わかった。ちょっとだけ、どかすよ?」
そう言って、尻尾を避けるように指を添えた瞬間――
「にゃっ……! あっ♡ ……あん♡」
(……おいおいおい、ちょっと触れただけなのに、この反応は……!?)
妖艶な声が響き、背筋に悪寒ならぬ”別の感覚”が走る。
「ちょっと、黙っててもらえるかな……? はは、よいしょっと……っと!」
そうして腰を持ち上げた瞬間――
「……あれ?」
爪が急に抜け、重力に逆らえず、二人とも床に倒れ込んだ。
「フガッ!? フガフガッ!? フガフガフガッ!?」
(いてぇ! ん? これは……太もも!?)
柔らかく弾力のある感触。そして、どこか柑橘系の甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。
「にゃぁ……痛いですぅ……。あっ……♡ そ、そんなにしゃべらないでください……♡」
ガバッ!!
俺は反射的に身を起こした。
「も、申し訳ない!!」
「いい、のです……。別に……むしろ、も……もっと……してほし……」
「……え?」
「モゴモゴ!!」
慌てて口を手で押さえる猫耳美少女。顔を真っ赤に染め、耳までピクピクと震えている。
(今、なんかヤバいこと言いかけたよな……?)
「えーっと……まあ、それは一旦置いておいて。ここは執筆部屋……で、いいんだよな?」
彼女はふくれっ面をしながら、ぴんと背筋を伸ばした。
「そうです! ここは執筆部屋! そして私は――」
自信たっぷりに胸を張る。その動きに合わせ、豊満な胸がぷるんと揺れた。
(ほう……あの双子の修復者、アストレリカには及ばないが、うちの琴葉といい勝負だな……)
「申し遅れました! 私は、ここのメイドのシュレです!」
誇らしげに自己紹介する彼女。
「なるほど。それで……ここでは何ができるんだ?」
ーにゃ! それはですね。
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