黒い凶鳥は現る
シュレのログやステータスを確認してみると、ログには毎秒ごとに彼女の動きが詳細に記されていた。
「はは、さっき俺が書いたやつがあるじゃん」
だが、俺が日本語で書いたはずのものが、なぜかフォトン文字に変換されている。これもスキルの恩恵なのか…?
「ステータスも確認してみるか」
【ステータスウィンドウ】
名前: シュレ
性別: 女
種族: 猫人族
レベル: 100
体力: 2500
魔力: 1300
筋力: 1500
敏捷: 2800
耐性: 2200
特性スキル
《観測者》《霧雨》《認識のパラドックス》
《五月雨突き》《惨殺爪》《サイレント》
通常スキル
《加速LvMAX》《体術LvMAX》《ステップLvMAX》
《衝撃波LvMAX》《爪研ぎLvMAX》《斬撃LvMAX》
魔法
《ハイヒールLvMAX》《ブリザードLvMAX》《ハイウィンドLvMAX》
称号
《執筆部屋のメイド》《ブラックキャット》《絶対服従》
「……うん、これ、完全に化け物だよな」
すると、隣から気配を感じた。
──タッ
「あー、私のステータス、見ましたね~?エッチだー!」
「なんでだよ!!」
ツッコミながら、俺はフリーボードに《シュレが何もないところで転ぶ》と記述。即座に効果が発動し、彼女は床に倒れ込んだ。
「ご、ご主人様~!!」
ムスッとした顔をしているが、倒れた衝撃でスカートが捲れ、黒いパンティがあらわになっている。本人はまだ気づいていないようだ。
やがてシュレも状況を察し、顔を真っ赤にしながら俺を睨んだ。
「本当にエッチなんだから…」
「……いや、便利すぎるだろ、このスキル」
改めて《執筆》スキルの強さを実感する。レベル差すら関係ないとは、反則級じゃないか?
「シュレ、お前ってこの部屋から出られるのか?」
「にゃ、私はここの管理人なので、アズールの世界には行けません」
「そうか、悪いな、変なこと聞いて」
「いえいえ!」
シュレは猫耳をぴこぴこと動かしながら微笑む。可愛い。
「じゃあ、また今度お邪魔するよ」
「ご主人様、くれぐれも影には気をつけてくださいね」
急に真剣な眼差しでそう告げられる。
「あー、分かってる。修復者にも言われたからな。じゃ、またな」
直感的に帰還の仕方が分かる。
──アズールへ。
すると、一瞬で視界が暗転し、気づけば元の森に戻っていた。
「よーし、スキルの使い方も分かってきたし、腹減ったな」
せっかくだし、ラーメンでも頼むか。フリーボードを開き、記述する。
《ラーメン出現》
──*1日の文字数を超えています*
「おい、嘘だろ!?くそっ、シュレを転ばせてたのがここにきて仇となったか…」
──グゥゥゥゥ…
仕方ない、野草でも食べるか。苦そうだが、生きるためだ。
そのとき——。
「ガァァァァッ!」
背後から不気味な鳴き声が響く。
振り向くと、そこには巨大なカラスのような魔獣がいた。黒い翼を持ち、胴体には赤いラインが走っている。しかも、頭が二つ……大きさは通常のカラスの三倍ほどか。
「……これはヤバいぞ」
【ステータスウィンドウ】
名前: ダブルクロウ
レベル: 20
体力: 250
魔力: 100
筋力: 30
敏捷: 100
耐性: 50
ランク: C+
特性スキル
《二つ頭》《血液躍動》
通常スキル
《滑空Lv2》《飛翔Lv2》《気配遮断Lv2》《突進Lv5》
魔法
《ファイアボールLv3》《アンチバリアLv5》
称号
《小さな森林の覇者》
「やっぱ、やべえじゃねえか」
ダブルクロウは二つの口から炎の玉を生成し、俺に向かって放ってきた。
「ちっ……!」
咄嗟に避けるが、一発が左腕をかすめた。
──ジリジリと焼けるような痛み。皮膚がめくれ、血が滲む。
「くそがっ……!」
なんとか記号を書こうとするが、相手の動きが速すぎて避けるのに精一杯だ。
「頼む……空中に記号を書けないか?」
祈るように願い、念じる。
《×》
──シュンッ!
「……来たぜ、相棒!」
目の前に現れたのは、もう一人の俺だった。
「お前がこんなに頼りになるなんてな」
コピーがニヤリと笑う。
「じゃあ、いくぜ?」
「ああ!」
──《+++》
力が湧き上がる。ダブルクロウも警戒したのか、空からこちらを観察している。
「そんなところにいたら……危ないぜ、鳥さんよ!」
「落ちろおおおおおおお!!」
衝撃波を放つと、相手のファイアボールをかき消しながら一直線に飛ぶ。
──ズバァァァンッ!!
ダブルクロウの片方の頭が吹き飛んだ。
「……よし、あと半分」
しかし、ダブルクロウの特性スキル《血液躍動》が発動し、赤いラインが脈打つように光り出す。
「やるしかねえな……!」
俺はさらに三体のコピーを生み出し、総勢五人で突撃を仕掛けた——。
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