悪霊の同士討ち編(5)
「ちょ、占いが仕組みってそうなんだったわけ?」
聖書研究会の部室で、直恵は事情を全て話した。
佐伯は意外と話を聞き入れ、素っ頓狂な声を出す。元々比較的佐伯と仲が良かった桜も同席していたのも良かったかもしれない。佐伯は気が強い見た目だが、中身はそうでも無いのかもしれない。
もう窓の外は日が暮れ始めていたが、こんな事を説明していたら、時間がすぐ過ぎてしまった。
「でも陽那は何で占いやってるの? 佐伯ちんは何でか知らない?」
桜が呑気に聞くと、佐伯は皮肉っぽく嫌な表情を見せた。意地悪そうな陽キャっぽさ全開で、直恵は少しため息が出そうだ。
「陽那は、目立ちたがやで認証欲求強いもんな。桜ちんの事もめっちゃ嫉妬してたから。YouTubeに出た事、嫉妬してすっごい文句言ってたから」
直恵は、佐伯から原因がわかりホッとした。多くは占いをするものは、認証欲求を拗らせている。金目当てのものも多いが、あんな風に人に偉そうに言える職業は占い師ぐらいなものだ。多くは拒絶や自己否定の悪霊を受け入れ、占いの霊を招きこみやすいと直恵は思っていた。
「でも、どうしよう。このままだったら、私占い通りになっちゃうんだよね? 淡雲さん、助けて〜」
佐伯は意地悪そうな表情をやめると、すぐに直恵に泣きつき始めた。佐伯についている低級悪霊がザワザワと動き、思わず顔を顰めたくなる。
「祓ってもいいけど、福音について聞いてくれる?」
「そうだよ、佐伯ちん。福音を受け入れて、今までの事悔い改めないと、また悪霊帰ってくるからね?」
「福音って?」
涙目の佐伯が、意外と直恵と桜の話を聞いてくれた。やっぱり心のどこかで低級悪霊の影響を受け、何か心で感じるものもあるのかもしれない。
「そっか。神様はそんなに私の事を愛してくれてたんだね」
佐伯は意外と心の根から腐ってはいないようだ。本当に心が腐っている場合は、神様から呪いを受け福音を受け入れないように心が頑なにされてしまう。
こうして佐伯は福音を受け入れてくれたので、悪霊を祓う事になった。
しかし、悪霊祓いをする前に一つ確認したい事が直恵にあった。
「あなた、陽那と親しいわよね? 彼女の行動や不審な点があっったら、私達に連絡して欲しいんだけど、いい?」
「えー、何で?」
「心配だからよ。あんな占いなんかするなんて」
「私も陽那ちーんの事は心配だよ」
いじめられていた被害者でもある桜が、陽那を心配していると知り、佐伯は目を丸くして驚いていた。
「あんた達、敵への愛があるんだな」
「別にそんなんじゃないけど」
「神様の真似してるだけだよ〜」
桜が呑気に言い、この場のムードが柔らかくなった。これから悪霊祓いをするような雰囲気は薄いが、直恵は腕まくりをして佐伯に向き合った。
しばらく桜と二人で佐伯に憑いた悪霊を追い出した。低級悪霊だった為かすぐに追い出せてしまった。
あっけないもので、佐伯はキョトンとしていた。
「これでいいの?」
「うん。ま、後で私のところの教会行ってもらって牧師に詳しく聖書の事聞いてね」
「わかったー。っていうか何故か聖書とか気になってきた!」
佐伯はそんな事まで言っていた。おそらく悪霊のいなくなった良い影響だろう。悪霊が憑いている人の場合が無意識に聖書や神様の悪口が出てくるが、逆の場合は聖書に興味をもったりする。
という事でとりあえず佐伯の悪霊問題については解消した。
一応このあと佐伯を家まで送っていったが、陽那の占い通りになる事はなかった。つまり、占いは外れた。
ちなみにクリスチャンも血液型占いや星占いも全く当たらなくなる。そもそも占いに触れるクリスチャンはいないが、万が一占い師に変な事を言われても、それが当たる確率は低いだろう。占い師に憑いている悪霊よりも強いお方に守られている。
問題は陽那だ。
すでにいじめと占いの罪を犯している。原因は拒絶か自己否定の悪霊となじみ、認証欲求を拗らせているのだろうが、どうやって解決したら良いのかわからない。
このタイプは福音を聞き入れるか定かではないし、無闇矢鱈と悪霊祓いをすれば良いというわけでも無い。
自宅に帰った直恵は、2時間ぐらい祈っていた。勉強などは後回しで良い。
結局自分は無力だ。
頼める方は神様しかいなかった。




