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朝霧桜編(2)

 高校生というのは、大人と違って狭い世界に生きている。バイトをしているものや趣味に熱中しているものも多いが、学校生活が全てと言ってもいい。


 そんな学校生活で座る席というのは、その明暗を分ける。うっかり苦手な人のそばの席になってしまったら詰む。直恵も苦手な席(特に最前列)にはいたくは無い。


 クジで決めるとはいえ、席替えは緊張感が走る。明暗を分ける一瞬の戦い。負けられない。そんな空気で張り詰める。


「私、淡雲さんの隣なんていやあああああ」


 泣いて叫ばれた。


 直恵は、窓際の一番後ろという天国に近い席をゲットしたわけだが、隣の席のクジを引いたクラスメイトに泣いて嫌がられた。


 ちなみに担任はスルー。何もせずうとうとしている。まだ若い教師で頼りない。


「あのね、くじ引きで決まったんだから我慢しなさいよ。そんなんで、社会出てやっていける? キモいおじさんが上司になってずーと席が隣という事もあるのよ」


 直恵は、泣き声を聞きながら冷静に言った。だんだんと頭が冷えてきて下らない事に思えた。悪霊が襲ってくるわけでもあるまいし。


 ただ、隣で泣きじゃくるクラスメイトにも悪霊が憑いているのが見えた。どうやら夏休みに彼氏が出来て、婚前交渉をやっちまったらしい。その性的不品行の悪霊がびっちり身体に憑いていた。


 隣の席が嫌だと泣きじゃくるクラスメイトはイライラともしたが、これを見てしまうと同情しか無い。これだけ泣いてワガママ言っているのも悪霊の影響を感じた。悪霊は肉的な欲も深める。特に女性はワガママお姫様病にする事もある。


 婚前交渉は、現代では普通の事。テレビや映画でもカッコよく扱っているが、本来なら聖書で書かれる罪の一つ。それぐらい神様は夫婦という共同体を祝福している。


 身体の関係を持った人とは霊も一緒になってしまう。相手が悪霊憑きの場合、肉体関係を持ったあと、悪霊パワーが何倍にもなる。おそらくこの泣いている彼女も相手の男からの倍増した悪霊かが入っている。そう思うと可哀想ではあるが、ここで悪霊祓いはさすがに出来ない。


「ちょっと、河田さん。泣かないでよ。くじの番組変わってあげるから」


 そこに何故か朝霧桜が颯爽と現れた。くじを泣いてるクラスメイトと交換。桜が隣の席になってしまった。


 陽キャのクラスメイト達は、どよめき声を上げてるが、桜は涼しい顔をしていた。


「よろしく! 淡雲さん!」


 桜は、アイドルのような可愛らしい笑顔を見せる。クールに見られる直恵には無い要素だった。


 こうして桜が隣の席になったわけだが、直恵はある事に気づいた。


 桜にも悪霊が憑いていた。


「ちょっと、あなた。夏休み中に彼氏でできた?」


 ついそんな事を聞いてしまうほどだった。何か悪霊が憑いているはずだが、モヤモヤとして見えて、どの種類の悪霊かは全く見当つかなかった。


「え、彼氏なんていないけど。淡雲さん、何言ってるの?」


 桜は、目をパチパチとさせていた。まつ毛が長いお陰で瞬きもサマになるなと直恵は思った。

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