幻想物語編(3)
直恵は自室でスマートフォンで令美について調べていた。
勉強も風呂も終え、一息ついたところだったが、今日教会であった令美の事が気になった。
見た目はサブカル女性で、仕事熱心という事もわかったが、あの後少し面倒くさかった。
悠一に質問責めをし、祈祷会のはじまる時間が大幅に遅れてしまった。迷惑とははっきり言えない悠一に、令美の面倒を押し付けられてしまった。
かなり執念深そうな女性だ。悪霊の影響も考えたが、直恵が見たところそうでもない。悪霊だったら最悪追い払えば良いわけだが、天然でそんな事をされるのは、正直めんどくさい。
しかし、人の良い桜は令美に何かシンパシーを感じてしまったらしい。二人で勝手に話が盛り上がり、明日聖・ヒソプ学園にも取材しに来る事になってしまった。
「面倒くさい、面倒くさい……」
直恵は盛り上がる桜と令美の事を思い出し、微妙に不快になりながらも、スマートフォンで調べた令美をの情報をノートに書き出した。
・2014年、少女小説レーベルでデビュー
・作風は溺愛系、シンデレラストーリーが多い
・狭いジャンルであるが、熱心なアンチがいて、発売日にいつも低評価レビューがついている
・過去に低評価レビューしたものと裁判沙汰。
ネットで調べられる令美の情報はそんなものだった。しかし、あまり売れているとは思えない作家でも、熱心なアンチがいるのが驚く。まあ、そのトラブルも和解して、和解金も国境なき医師団に全額寄付したという報告がブログに書いてあった。
ただ、この件でも一部な過激派がアンチになり、今も低評価レビューを付けられているという噂も流れている。
まあ、ネット上の事なので真意はわからない。令美の SNSを見ると、猫やアイドル、アイスやケーキの話題ばかりで、自著の宣伝は控えめで、同業者とあまり交わってはいなかった。
どうも凝り性のようで、一度ハマりと全力でヲタクになってしまう性格である事はわかった。SNSから見える人柄は、さほど悪い風には見えない。キリスト教にもともと興味があるようで、もともと悠一の教会のコメントにもいいね!を押していたのも発見した。
・悪い人では無さそう。
令美については、悪い人ではないと結論づける。ただ、なんとなく悪い予感がした。
うっかりSNSの高広告で片目を隠しているモデルの写真を見てしまった。そこから悪霊が寄ってきた。
『令美に嫉妬でもしてるの? いやいや、直恵が一番よ。さあ、認証欲求満たす為に映える写真上げてみよ?』
SNSに住み着いている傲慢さを引き起こす悪霊が誘惑して来たので、祈りと御言葉で祓った。
令美に嫉妬なんてしていない。ただ、嫌な予感がする。
ハロウィンは終わったが、これからラスボスのクリスマスもある。安易に油断は出来なかった。