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お嬢様はエクソシスト  作者: 地野千塩


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幻想物語編(1)

 ハローウィンが無事過ぎ去った。


 直恵は直接関わっていないが、悠一はハロウィン関係の悪霊祓いは大変だったらしい。


「この地域にも変な儀式して悪霊呼んでいるヤツがいるっぽいんだよなー」

「本当?」


 ここは、悠一の教会の庭にある物置だ。物置も先日の雹の影響をうけ、一部破損していた。その処理の為に物置を悠一と二人で片付けていた。


 すっかり放置していたので、今日は礼拝が終わったら時間を作って片付けていた。物置の多くは段ボールに入った資料ばかりで、とりあえず外にだし、捨ててもよいものと選別する事にすた。


「地域に悪魔崇拝やってる奴がいるなんて、困ったものね」

「そういえば例のメイド頭さんの悪霊の原因は、母親のやってた悪魔崇拝儀式って事だったのか?」

「ええ。スピリチュアルでもガチでやってるところもあるみたい。ガチ過ぎて本人はスピリチュアルだと全く気づいていなかったみたいだけど。気をつけなくちゃね」

「朝霧さんは? またロックの悪霊つけてたりはしていないか?」

「桜は大丈夫よ。毎日元気ね」


 桜は元気すぎるぐらいだった。幸田の件のおかげでますますエクソシストしたいと燃えていた。ただ、そうそう桜や直恵が祓える悪霊にはで出会わないものだ。いたとしても相手がアンチキリスト教だったり、福音を受け入れな場合は、迂闊に悪霊を祓っても逆効果になる。悪霊は一度祓われても、当人が福音を受け入れず悔い改めもしない場合、仲間の悪霊を引き連れて報復してくる。さらに悪くなってしまう。


 そこは桜も直恵も慎重にいきたいところだった。


 直恵はそんな事を考えながら、まだ明けていない段ボールを開けた。


 その中にはかなり古い資料が入っていた。紙も黒くなり、独特な匂いもする。


「なんだ? これは? ああ、ひいばあちゃんとじいさんの資料か」


 悠一は段ボールを覗き込んで、中の本を一冊取り上げる。そういえば悠一の京香は明治や大正時代から代々教会を運営していた。もしかしたら当時の資料もあるかもしれないと直恵もワクワクしながらノートのような冊子を段ボールかとって眺めてみた。


 表紙の神谷与武という名前が書いてあった。ヨブか。おそらく旧約聖書のヨブ記からとった名前だろう。苗字も悠一と同じ神谷だし、この冊子は悠一の先祖のものとみて間違いないだろう。


「これはお爺ちゃんのノートかね、お、日記じゃん!」


 直恵が読もうとしていたが、悠一も興味があるようで勝手にとりあげて熟読し始めてしまった。


「ちょっと、先生。面白いの?」


 熱心に熟読する悠一に直恵は声をかける。なぜか目に涙まで浮かべている。どうやら祖父のノートを発見して感動しているようだった。


「いやぁ、これは感動だ。ロマンな日記というかエッセイだね」

「そんなに面白いの?」

「うん。少女漫画かと思った。ひいばあちゃんとひいじいちゃんの馴れ初めが綴られてる」

「え? どんな?」


 直恵はこの日記を借りる事にした。

 家でじっくり読んでみた。確かに悠一の言った通りだった。


 大正初期の男女の結婚するまでの事が綴られていた。妻は孤児で親戚の家でいじめられていたが、教会で保護され牧師の息子と結婚する。まるで少女漫画のようなシンデレラストーリーだった。


 確かに字は難しく書いてある部分もあったが、十分に伝わってくるものがあった。


 悠一も感動し、教会のSNSにこの事を画像付きでアップした。教会のSNSの割にはイイね!がついた。


 なんでも少女漫画や少女小説好きの目に留まり、その界隈で拡散されたらしい。その界隈では今は明治大正時期の女性のシンデレラストーリーがブームで「リアル和風シンデレラ」と言われてしまった。


「しかし、ロマンチックよね。いじめられていた孤児がみそめられて結婚するなんて」


 桜もうっとりとした表情で語っていた。


「まあ、私は漫画や小説はあんまり見ないねどねー」

「えー、直恵冷めてるよ!」


 桜は引いていたが、娯楽は現実逃避な面が大きい。そこにくっついている悪霊もいるので気をつけたいところだった。


「まあ、この日記は実話だし、ロマン溢れる話だけどね」


 直恵は、軽くため息をつき「イイね!」がいっぱいついた悠一の教会のSNSを見つめた。


 このSNSでの発言が再び悪霊騒ぎに巻き込まれる事など直恵も桜も知る由もなかった。

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