2) 別の王族が黒幕じゃないの?
「ローリィ伯爵の屋敷はスゴイね、温泉まである」
「さすが温泉の街だな」
ここは、屋敷の一角にある温泉施設の脱衣所です。
私たち二人は、いつもの制服に、深緑色のマントを羽織り、屋敷に潜入、、、いや、訪問しています。
「伯爵は、温泉の税金をごまかしている疑いがある」
クロニィが、今回の潜入目的を説明してくれます。
「それに「双子の人権法案」の議決に反対しているのも、私は気に入らない」
秘密ですが、私は双子なのです。
双子が生まれた場合、片方は、生まれてすぐ養子に出されるか、神に捧げられるのが風習です。
この法案が通れば、そんな風習は無くなり、養子に出された片割れは、本当の親の元に戻ることができます。
「温泉施設の入口は一つ? 混浴なのかな」
「入口前に、時間で男女を入れ替えると書いてあった」
「火気厳禁とも書いてあった、火の魔法は使うなよ」
「今回は大丈夫よ」
ここの温泉に微量含まれるガスは、燃えるらしいです。
同じあやまちを繰り返さなければ、失敗と言わないのが、私です。
「お楽しみのところ、邪魔するよ」
ローリィ伯爵と、人相の悪いヤツらが短剣を構えて入ってきました。
ずいぶん早い発見ですね。もしかして、脱衣所の中をいつも見ているの?
「あら、税金を懐に入れてる伯爵様ではありませんか」
「よく調べたな、完璧に隠していたのに」
もちろんハッタリですよ。見事に引っかかってくれました。
「ホシミッツ、この狭い場所での戦いは不利だ、アレを使うぞ!」
「承認します」
クロニィが、王国の紋章を刻んだ魔道具「威厳」を取り出し、悪党に見せます。
「この方は、王弟陛下の一人娘、ホシミッツ令嬢である」
魔道具がチカチカと光っています。
「不敬である、ひざまずなさい!」
私よりも地位の低い者、全てがひざまずき、金縛り状態になります。
今回は平和的に解決です。
「え!?」
なぜかローリィ伯爵が動き、浴場を横切って裏口の方へ逃げます。
「魔道具「鎧騎士」装着!」
追いかけながら、腕輪に魔力を込めます。
魔力の糸が私を包み、ピンクゴールドの鎧へと変わっていきます。
クロニィは、ガンメタリック色です。
「サンダーボルト!」
電撃が、浴場を走り抜ける! 予定でした。
「ドン!」
耳がキーンとして、なぜか、私が温泉の外まで吹っ飛んでいます?
「ガラガラ」
また? 温泉施設が吹き飛び、屋敷が半壊しています。なにが起きたの?
「大丈夫か、ホシミッツ?」
護衛のクロニィが、ローリィ伯爵を縛り上げています。
鎧騎士は解除されています。
「これは、ガス爆発ですか!」
駆け付けた騎士団が、火気厳禁の張り紙を指差しますが「私、何もわかんない」と、あどけない笑顔で答えます。
まさか、電撃のスパークも火気だったなんて。
◇
馬車に揺られて、次の街へと移動中です。
旅人用の深緑色のマントを羽織り、フードをかぶっています。
「あの伯爵、金縛り状態から動いたよね」
「私よりも高い地位の人間から、命令を受けていたって事だよね?」
疑問を口にします。
「正式に王位継承権が剥奪されるまであと1ヶ月あるから、お前は、追放はされたが、まだ王族だ」
「今のお前よりも地位の高い人なんて、6人しかいないだろ?」
クロニィが正論をいいます。
国王、王妃、王弟陛下、第一王子、第二王子、王女・・・わっからないなぁ。
「お前の、双子の兄弟が、一番怪しいけど、信用できるのか?」
クロニィは私の素性を知っています。
「わかんない。私が姉だなんて、知らないはず・・・」
「ん? 何を見ているの?」
「伯爵のポケットにあった」
「コイン?」金のメダルに黒い五芒星が描いてあります。
「盗んだの?」
「凶器を持っていないか確認しただけだ、前の伯爵も持っていた」
クロニィは、2枚のメダルを見せてくれました。
「古代の五芒星は、天と地の力を表し、王国が信仰する六芒星は、それに愛が加わったものだと聞いているよ」
「そうだな」
「なんだろうね? 「ホシミッツたちの戦いは、これからだ!」、、、なんてね」
「縁起の悪い話はするな!」
今日も、馬車の向かう先は、曇り空です。
お読みいただきありがとうございました。
本日中に全5話を投稿して完結いたします。
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