二十二章 Foreword Break Sudden 其の参
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二十二章 Foreword Break Sudden 其の参
何度も、何度も突進し、仲間達から距離を取られ、完全に二人になった乾と舎人子。
乾の猪突猛進な一撃を防ぐ度に移動させられ苛立ちを覚えるも彼女はそれを止めることなく放ち、そして、何処かに着いたことを気づいた途端、舎人子を槍で振り払い吹き飛ばした。
急に突進では無い振り払いが来た事で不意をつかれた舎人子は武器で直撃は免れたものの体が慣性に則り、とある施設の駐車場に叩き込まれる。
そこは夜桜町の総合商業施設であり、乾が舎人子との決戦の場に選んだ闘技場。
お互いにこの商業施設の構造をよく把握しており、純粋なまでの戦闘力を競うために乾はこの場、この広い場所を選んだ。
舎人子は駐車場に転がされたがすぐに立ち上がり、再び武器を構えるも何故か乾は現れず、瞬間の沈黙が流れた。
(この駐車場なら遮蔽物が無くて目に見えてれば避けれる)
考えていたのも束の間、乾は舎人子の背後目掛けて一直線に突進してきた。
走る音で気づき、すぐに後ろに大剣を振るうと槍にぶつけ、重低音が鳴り響く。
互いに見合いながら、睨み合いながらすぐに次のモーションへと得物を動かした。
槍の先端を回し、持ち手の柄を舎人子の顔にぶつけようとするもののそれは直前で避け、大剣を再び振るう。
乾は先日とは全く違う戦い方をしており、槍術ではなく、それは棒術に近いモノに変化していた。
槍自体も以前よりも長くなっており、そのリーチを活かした戦い方で舎人子を翻弄する。
槍で突いて来たと思いきやそれを回転させ、長いリーチで距離を取る。
大剣のリーチよりも長い槍に翻弄されながらも舎人子はその攻撃一つ一つを読み取り、予想していく。
舎人子は乾の持ち手を回転させながらぶつける動きを学習し、目で読むと大剣を受けることなく避け、間合いに入り込み得物を振るった。
だが、間合いに入り込まれ、体に放たれた大剣の一撃を乾は舎人子とは違い、匂いで察すると当たる直前に足のバネを使い宙に浮かせ、紙一重でそれを避け切った。
大剣が空を切り、確実に当てたつもりで放った一撃が避けられると逆に隙を生んでしまい、それを乾は逃がさない。
ガラ空きになった背中に向けて両足で飛び蹴りが突き刺さり、大剣が手から離れると乾は止まらず、槍を使って舎人子の体を貫いた。
舎人子はギリギリで避けるも右肩を貫かれ、穴が空く。
穴の空いた箇所から血が流れ落ち、痛みがじんわりと広がった。
「痛いんだけど」
舎人子はそういうと肩から流れる血を止めるために片腕で穴を塞ぐもそれでは止まることなく血は溢れ出た。
しかし、乾はそんな彼を見ても尚、油断なく、走り出した。
彼に対しての警戒心は右手を落とされた時から常に研いできたものであり、それは鋭く、刃こぼれすることない刃の様なものである。
故に、舎人子の息の根を止めるために、確実に仕留めるために彼女の、乾拓真の警戒心は緩まることない。
舎人子との距離を詰め過ぎず、槍のリーチから生まれるアドバンテージを用いて突きを放つ。
空いた穴、塞ごうとする腕。
片腕だけである舎人子にすら、容赦はない。
だがわその容赦の無さを舎人子はその動きを潰そうと動き始める。
放たれた突きを目で見て、しっかり避けると片腕を振りながら乾の間合いに入り込んだ。
間合いに入った途端、舎人子は穴を塞いでいた腕をつ使い拳を放った。
血を流させないために塞いでいた腕を使った奇襲であったがそれは簡単に防がれてしまうも槍を使わせない間合いを詰めると殴り合いへと持ち込んだ。
乾は槍を振るおうとするとしっかりと距離を詰めており、仕方なく舎人子の殴り合いに応じる為に槍を手放した。
舎人子は右から放った拳を受けられてはすぐに切り替えて蹴りを放つ。
乾もまた、放たれた蹴りを防ぐも彼の徒手空拳は止まらず、飛び跳ねる様に攻撃を続けた。
舎人子の体に空けたはずの穴は何故か、黒い布のようなもので覆っており、それが血が漏れ出るのを完全に防いでいる。
(空けた穴を何かで塞いでるな? 会長の言ってた影の操作か? )
だが、それに気を取られる事なく、乾は舎人子と拳をぶつけ合った。
乾と舎人子。
似たもの同士では無いが譲れぬ物を持った者同士。
舎人子は拳を目で避けるも乾は危険を匂いで察し、判断する。
「真似っこしないでよ」
殴り合いの最中、舎人子が声を上げるも乾もそれに応えた。
「真似なんてしてねえよ。お前こそ、俺の真似をするな」
蹴ったと思いきや、それを避け、避けた途端に次の動きに移る。
当たる事なく、一人は目で、もう一人は鼻で、感知しながら避けあい、打ち合う。
ジリ貧ではないが互いに体力と集中力をすり減らし続け、限界が近くなりながらも譲らない。
どちらかの限界が来るまで殴り合いに持ち込もうとするも最初にその均衡を突き破った者がいた。
舎人子の能力は影の操作。
それはある程度遠くの物であったとしても自分のモノとしていれば操ることが出来る。
影を用いて大剣を自分の元に投げつけると片腕で巧みに柄を掴み、刃を乾に向けて振るった。
唐突な大剣の一振りを乾は匂いで感知し、宙返りしながら避けるも舎人子はその瞬間を逃さない。
(攻撃するのは宙に浮いてる間じゃない。着地の瞬間)
乾の足が地面に着く、ほんの数秒前。
大剣を影に持たせると乾の背中に蹴りを入れると再び得物を握りしめ、それを振るう。
突拍子のない連撃に乾はギリギリで反応し、腕で防ぐも彼女の体は宙を舞い、デパートの壁に磔のようにされた。
磔にされた乾 拓真を舎人子は容赦なく追撃する。壁を突き破り、二人の戦士が常識破りの方法で商業施設に入店した。
しかし、彼らを待っていたの店員などではなく、グロテスク且つ気色の悪い地獄のような光景であった。
先ず、それに気づいたのは乾である。
一人の人間の腕と足が反対にくっつけてられており、真っ赤血で染め上げられていた。
そこに立つ異物に目を奪われるも湧き立つものは怒りと憎悪、そして、人の道徳を踏み躙る、禁忌に触れるもの。背筋をなぞられるような悪寒を感じると声を上げることすら出来なくなる。
次に気づいたのは舎人子であった。
彼の目に映ったそれは乾と同じ物であるがかつて、自らが目の前で見た何かに似ており、幼き記憶の海の闇が舎人子を支配してくる。
***
「僕には煌々と輝く美術品に見える?ねえ?本能の、心の赴くままに言ってごらん? 」
幼き記憶の影ぼうし。
問いかけに自分は答える。
「綺麗」
***
「綺麗」
そのグロテスクなオブジェを見て、舎人子は思わず口ずさんだ。
それが異常だと、それが異質だと、それが人が感じてはいけない感情であるにも関わらず、無意識に口を開いてしまった。
それを聞いた乾は舎人子の異常さに気づくと同時にすぐに彼をこのまま野放しにすることへの危険性を理解する。
そして、槍の先を彼に向けて、突進した。
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