二十一章 Foreword Break Sudden 其の弐
終わりは急に、超特急に訪れる。
足掻け、歌え。
戦い、死んでいけ。
*3*
学園に八人の生徒が集まっていた。
五人の生徒と三人の生徒に分かれ、互いに睨み合っている。
夜空には大きな月が煌びやかに輝いており、彼ら全員を照らしていた。
学生達が学園に集まれるのは当然のことであったが彼らの手には武器が握られていて、学舎である場所は異様な空間へと変貌している。
そんな中、一人の青年と一人の少女が前に出ると両者共に見合いながら少女が口を開いた。
「新卓有紗、降伏するつもりはないか? 」
「するわけないでしょ。あなたを倒して、私は私の目的を実現させる」
「そうか、なら始めよう。この数日で色々な事があったがこれで最後だ」
互いに手に握る武器を相手に向け、同時に声を上げた。
「「全員、戦闘開始! 」」
その言葉を聞いた途端、乾が彼ら、いや、ある一人を目掛けて突進した。
狙った先には舎人子がおり、彼ごと槍と同時に吹き飛ばす。
舎人子は大剣で防ぐも勢いに負けて、一気に仲間達と離されると学園外に乾と共に見えなくなっていく。
「リコ?! 」
彼を追おうと有紗が走り出そうとすると背後に迫る殺気に気付き、武器を構えた。
「意外と冷静じゃねえか。そうだ、お前の相手は俺だよ騎士王さんよ! 」
イグザは手に握られた斧を振るうとそれを剣でいなし、距離を取ると舎人子と離れ離れではあるものの彼の事を信用して、有紗は目の前に立つ集中する。
イグザもまた、目の前に立つ有紗に対して、己の全てをぶつけようと両手に握る武器に余計に力が入って嬉しそうに振り回した。
互いに一つのチームを纏める者同士。
彼らの願いを背負い、それを武器に込めながら全力で剣と斧を打つけ合う。
有紗の剣が弾かれ、空いた体に斧が振るわれるもそれを飛び跳ねて避けると再び得物で命のやり取りを続けた。
剣と斧。
リーチがあるのは剣であったがそれを補う様な速度で放たれる両手に握られた斧は振るわれる。
それをよそに三人は一人の大男と対峙ししていた。
巨大な棍棒を持ったそれを見て、一佐はそれに向かって喋りかけた。
「よぉ、雪音先輩。あんたがゲームに参加していてたなんて意外だったぜ」
彼女の声を聞いても雪音は答えず、それを見て、他の二人は何か雰囲気がおかしいと感じ、警戒心を強める。
すると、雪音はそれを見て、何も言わずに一佐達に近づき始めた。
「何か、発したらどうだ! 雪音姐! あんたと俺の仲だろ! 」
一佐の声が聞こえていないのか雪音の距離を詰める速度は上がっており、彼女は両手に武器を握った。
一佐の目の前に立ったと思いきや、次の瞬間には彼女の体がウイと瑠夏の視界から姿が消えていた。
視界から消えたと事を認識した途端、ドンと言う音が遅れてやってくると風が吹き荒れる。
雪音の握っていた棍棒が振るわれていた。
それを理解はするものの思考が追いつかず、ウイはその場から動けなくなっている。
ウイへと棍棒が放たれたのを瑠夏は咄嗟の判断で目の前に出た瞬間に、一佐同様、彼の視界から消える。
「あ、え、へえ? 」
ウイから変な声が出てくると彼はへたりと腰が抜けてのかその場にパタリと座り込むとそれにする容赦なく雪音は棍棒を振るった。
盾ごとウイの体が吹き飛び、自分の身を守ろうと必死になりながら丸まっており、ボールの様に跳ねる。
それを雪音は見ながらニッコリとした笑みを浮かべ、ようやく一佐の問いに答えようと声を上げた。
「一佐〜。あれほど闘う最中に他の事に気を取られちゃいけないと言われたわよね。蘭家の人間がこの体たらくなんてあなたのお父様とお母様が悲しむわ〜。とっとと、不良なんて止めて生徒会に入りなさい」
一歩一歩とボールの様に転がっていたウイの近くに向かっていく。ウイは先程吹き飛ばされた衝撃で気を失っており、そんな彼を雪音は狙っていた。
唄種雪音は幼い頃から常に獅子搏兎の精神を叩き込まれた。
どんな相手でも、どんな敵でも、どんな味方でも、常に全力で、それ以上のパフォーマンスで圧倒する。
唄種家に女として生まれた事で、余計に、徹底的に教えられており、他の家に嫁ぐ場合であってもその嫁ぎ先を寧ろ自分が支配しろとすらされていた。
故の、容赦のなさ。
目の前に転がる兎にすら全力で。
ウイの体へと到着し、再び棍棒を振るおうとした瞬間、その前に一佐が顔を血に塗れながら立っていた。
「流石に、早いわねぇ? 」
「蘭家の息子だぞ? なめんな」
そう言った瞬間に、一佐の体は再び宙へと舞っていた。
二度目の衝撃に血を吐くもその空中で自らに眠る因果を引き出すために叫んだ。
「接続! 雷撃乃突撃不死兵」
宙に浮きながらも彼は魔術言語を口にすると物理法則に則りながら、地面に落ちていき、すぐに雪音へと走り出した。
雷が地面を抉り、暗い闇を光が灯す。
銃剣を前にした一佐の突進を棍棒で防ぐとその一撃で雪音の体が宙に浮くと同時に吹き飛んだ。
「オイ! 弱虫ウイ、瑠夏!! 起きろ! 今からが本番だ! お前達の力が必要だから力貸せ! 」
ウイの近くには既に瑠夏がおり、彼の意識を覚まそうと軽く叩いていた。瑠夏のビンタで目を覚ましたウイはオドオドとしながらも一佐の声を聞き、彼女をサポートしようと盾を構える。
すると、吹き飛ばされていたはずの雪音が既に戻ってきており、それを眺めて先ほどよりも楽しそうに走り出した。
自分が思っていたよりも腹違いの兄妹が実力を身につけていた事に楽しくなり、自らの全力をぶつけるに相応しいと感じ再び棍棒を振るう。
一撃一撃が必死となるのを知った上で一佐、ウイ、瑠夏の三人は動き出した。
しかし、棍棒はしっかりと一佐を捉えており、それを彼女はわざと受け止める。
棍棒が当たる直前、ウイが彼女を守るために呟いた。
「コ、接続! デ、デ、眠地母神乃揺籠!! 」
ウイの因果の形は守護と慈愛。
盾が変化し、前面の門が開かれるとそこからオーラの様なものが一佐を包み込み、そこから彼女は攻撃を受けた。
ドンと言う鈍い音が鳴り響くも一佐は吹き飛ばされる事なく、血を吐きながらも棍棒を受け流し、雪音の顔に蹴りを入れる。
その一撃はしっかりと顔に入っていたが彼の顔から鼻血が少しばかり滴れるだけで流れた血を手で拭き取り、それを舐めると雪音は次の攻撃を放った。
一佐は吹き飛ばされるもの体に傷はなく、駆り立てられる闘争心を向けるとそれを感じ取った雪音は口を開いた。
「勝負はここからって感じねぇ。いいわ〜、本気で潰してあげる」
大男から放たれる異様な口調に対して一佐達はピリついた空気を感じると再び武器を握る力を強める。
***
(また、吹っ飛ばされてんだけど! )
舎人子は乾から放たれた突進を武器で防ぐもそれごと彼の体を吹き飛ばした。
学園の外に出ても尚、乾は止まることなく突進し、舎人子を学園から遠ざけ続ける。
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