二十章 Foreword Break Sudden 其の壱
最終決戦に向けて、それぞれの思いが交差する。
近づく終わりと共に現れるのは災悪の狂気。
*1*
最終決戦直前、有紗達はファミレスに来ていた。
「何で、ファミレスなんか来てんだよ」
一佐が悪態をつくとそれを気にせず、四人はワイワイとしながらメニュー表を眺める。
「私、季節限定のパフェにする〜」
「有紗がそれにするなら私もそれにする」
「ふふ、そうだなー、僕はこの赤いパフェにしようかな。赤い花が乗ってるなんてオシャレだし。一佐は頼まないのかい? 」
「ああ? チッ、来たからには頼む。唐揚げ定食だ」
「じゃ、じゃあ、わ、わたしはプリンアラモードで」
全員、何を注文するか決めるとボタンを鳴らし、定員を呼ぶ。
それらを注文して、彼女らは放課後を過ごし始めた。
舎人子はたまたま部の休日と重なっており、有紗についてきて今に至る。
料理を待つ最中、ウイがオドオドとしながら口を開いた。
「き、今日、ほ、本当に最終決戦なんだよね? こ、これが終わればゲームは終わるんだよね? 」
「そうだね、これが終わればまた、みんな普段通りの生活を出来る」
「奇妙なもんだよな。一ヶ月前から始まり、その間、一人も死人が出なかった。それなのにこの三日、三日間で、四人が落ちた。誰かが入ったからこんな風になったかの様に。なぁ、舎人子、お前はどう思う? 」
一佐は舎人子の目をしっかりと見て、唐突に問いかける。有紗はそれを止めようと動くも舎人子が静止して、一佐の言葉に反発する様ではあるものの冷静な口調で答えた。
「どうとも思わない。だって、それって偶然じゃないの? 私に何の関係があるの? 逆に知りたい」
「偶然にしちゃあ出来過ぎてるって思っただけだ。だが、12人の殺し合いが13人になっている。これがどれくらいデカい影響なのかは分からないがそれでもお前は全く関係ないとは言えないと俺は思ってる」
「やっぱり、私、あんたが嫌い」
「そうか、それは何よりだ。俺は、会った時からずっと嫌いだ」
二人はそう言うと言葉を使わず、ばちばちと目で火花を散らし始めり、一触即発の中、注文した料理が到着するとその沈黙を定員が切り裂いた。
「こちら、ご注文のお品になります。テーブルの方に置かせてもらいますね」
***
夕焼けに照らされる生徒会室。
そこで会長とその他二人の役員がお茶菓子をつまみながらゆっくりとした時間を過ごしていた。
「今日は紅茶か」
イグザは目の前に置かれたカップに手を取り、それを口に運ぶ。
口の中にフルーティーな味わいと奥行き深い、香りが広がるとそれ共にテーブルに置かれていたクッキーを頬張った。
「甘すぎるな。だが、この甘さが今は心地がいい」
「あら〜、ならよかったわ〜。乾くんもいっぱい食べて」
乾は雪音にそう言われるとクッキーに手を出した。
お茶と茶菓子を口にする音だけが部屋の中に鳴り響き、穏やかな時間が過ぎていく。
日が暮れるも、三人は何か口にする事なくその無言を楽しんでいた。
しかし、それを乾は惜しみながらも自らの決意を示すために切り裂いた。
「会長、雪音先輩、お願いがあります」
「どうした、乾? 畏まって」
「今日の一戦、自分と舎人子を一対一で戦わせてください」
「一応、聞いとこう。理由は? 」
「リベンジです。完全な私怨で、且つ、会長が楽しみにしていたのはこの身でひしひしと感じていました。しかし、それでも自分はヤツを倒したい。自分の矜持を傷つけられ、あの場で舐められていた自分が許せないのです」
乾はそう言うと頭を下げる。
それを見たイグザは少し考え事をして、再び口に紅茶を含めるとゆっくりと声を上げた。
「頭を上げろ、乾。たしかに、俺は舎人子と殺し合えるのを楽しみにしていた。だが、それはそれ。これはこれだ。お前がやりたいと言っているのは人としての矜持を取り戻す戦い。それを譲らない者は上に立つ者としての器ではない。俺の私情など、この場に於いては些事だ。乾、俺と雪音が残りの四人を相手する。お前は全力で舎人子を殺せ。そして、その首を俺の前に差し出しに来い」
イグザの言葉に感謝をし、再び頭を下げると自分の精一杯を込めて口を開く。
「乾拓真、あなたの威光と言葉に誓い、必ずや、舎人子を殺し、戻ってきます」
*3*
「クルクル、パッ! あははは! 綺麗だね! 綺麗だなぁ〜」
そこには死の香りがした。
人二人分の肉塊と原型を止めた死体が一つ。
それを使って何かを作る。
彼女には死体であるにも関わらず、色がついている様に見え、艶やかな色彩を使い、芸術品を作ってる気持ちでいた。
肉塊で色を塗る様にペタリペタリとオブジェを染める。
今日は珍しく、恐怖に染まった青じゃなく、双子が魅せる珍しい色の青。
深藍と白藍。
それらを弁護士の体に塗りたくり、彼女の体を染め上げた。
しかし、それは側から見たら狂った様な光景であり、全てが真紅に染め上げられ、異常な程の悪臭が漂う狂気そのものであった。
「あはは! 良い! 君達はとてもとてもとてもとても! 良い!!!! 双子が織りなす、青は深い青と白い青で私の心を躍らせる。そして、極め付けはその彼らの色で化粧された万魔定! 君が守りたかったモノで色付いた体はなんともまぁ、唆られる! ああ、とても、とても、見応えがあるな! 君達はデパートのオブジェとなってもらう! この素晴らしい作品を残った彼らの目にも留まってくれれば良いな! 」
クルクルと回りながら死体のオブジェでダンスする。
それは回りに回って回り続ける。
この世界の真理の様に。
狂狂、空空。
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