十九章 hey say 狂乱 舞 其の伍
狂ったナイフ。
戻らない肢体を照らして。
色のない殺意。
狂ったナイフ。
くだらない弁護を飛ばして。
hey say 狂乱 舞。
*3*
万の魔が作り出した法廷にて双子が見守る中、縦縞王子と万魔定の裁判が始まった。
クリティエは双方を見て、ニヤニヤしながらタブレットに映った文字を読み上げる。
「被告人、縦縞王子は2005年10月30日、夜桜町にて鏑木優斗とその妻、鏑木一果を殺した疑いがある」
その言葉を聞き、王子も笑っていた。
暗い感情の一切がない、満面の笑みは何を意味しているのか、それを知る由はなく、嬉しそうに声を上げた。
「ああ! 私が殺した。紛れもない事実だ!! 否定しない! むしろ、肯定しよう! それは私が起こした事件だ。君達は私がただの快楽殺人鬼と思っているだろうが、私は殺人を誇りと思ってる。死が救いなんてもんじゃない、死は芸術なんだよ。それはそうと、鏑木家の人々を殺したのは私! 如何なる罰も受け入れよう! 」
カーン。
甲高い音が鳴り響く。
それは定がガベルで机を叩く音であり、王子の悪意無き言葉の数々に彼女は、万魔定はかつてないほどにキレていた。
「クリティエ、判決だ」
「でも、まだ、君の話を聞かないと」
「私から言うことは何もない。こいつは罪を認めた。なら、もう判決を言い渡せ」
クリティエはため息を吐きながら彼女の言葉を聞き入れると冷静な口調で口を開く。
「縦縞王子、君に死刑を言い渡す。最後に言い残す言葉はあるかい? 」
「そうだね! また、会おう! 」
笑いながらそう言うと彼女の首に魔物で練り上げられた縄がかけられ、それが容赦なく上へ上へと上がっていった。
喋ることなく、ただ、縦縞王子は笑っており、そこに自らの死が迫っていないかの様に和かに、楽しそうに笑っている。
それとは裏腹に、王子の細い首を容赦なく締め上げ、縄がめり込むと足が宙に浮き、一瞬だけ体が硬直するも直ぐにそれはぐったりとした。
そこにかける様な恩赦も無く、定は人道的な法に沿った罰ではこの邪悪には生ぬるいとすら思っている。
しかし、今、法の中で、定は王子を討てたことにとりあえず安堵しようと彼女の死体に背を向けた。
「首吊りって意外と痛いんだね! 首らへんがウェッてなるなー」
既に、死んだはずの体から声がした。
定はすぐに踵を返すもそれは既に、縄を切っておりわ万を超える魔達の上に平然と堂々と、自分が主人かの様に座っていた。
「クリティエ!! あれをやる!! 力を貸せ! 」
クリティエは目の前に現れた不死を前に恐れを頂くことなく、定の呼び声に呼応して、走り出す。
そして、クリティエの手を繋ぐと定は自らの小さな体に宿る因果を調律させ、新たな武器を生む。
「万魔乃処刑人!!! 」
定の体に魔の大軍がコートを形成し、ガベルが剣に変わるとそれを持って何故か生きている王子との距離を詰めた。
王子は目の前に現れた弁護を捨てた処刑人に対して、ナイフで応対するも彼女の猛攻に幾つもの切り傷をつけられた。
剣は明確に、王子の命を奪い取ろうと彼女の全能力を用いて放たれる。
次から次へと放たれる斬撃に加えて、双子の斬撃も同時に襲い掛かり、彼女の体に大きなばつ印が生まれた。
「痛いな! 復活直後は本調子じゃないんだ! 手加減してくれ! 」
「黙れ、何故、生きてる? 私はさっきしっかりとお前が死んだことを確認していたんだぞ? 」
剣とナイフがぶつかり合い、火花が散るとそこから再び、王子の隙を突いて、双子が現れ斬撃を放つ。
確実にそれは王子の命を脅かすであろう一撃となり、流石の彼女も地面に膝をついた。
しかし、その様な危機的状況でありながら、嬉しそうに口を開いた。
「はぁ、そんなに死なないのが気に食わないかい? 私も傷つくぞ! 」
王子はパチリと指を鳴らす。
すると、斬撃を放った双子の二人の体の四肢を繋ぐ関節にナイフが突き刺さっていた。
双子は自らの体から流れる血を見て、目の前に立つ、縦縞王子という邪悪に対して、恐怖を抱いた。
それを見た王子は嬉しそうに、それはそれは新しいおもちゃを買ってもらった子供の様な無邪気な笑みを零し、再び喋り出す。
「それだよ! それ! その表情だ! その表情が! 見たかったんだ! うんうん、いいものが見れたし、そろそろ、教えてあげようか、私の魔術言語を」
「お前からの施しなどウケない」
この中で、唯一、王子に対して、恐怖を抱いていない定は彼女の言葉を聞こうともせず、手に剣を携え、突進する。
それを見ながら王子は再びパチリと指を鳴らした。
定の首にナイフが突き刺さる。
それは何故か、先程まであった、ぬるま湯に浸かっていたかの殺意などではなく、確固たる意志がある殺意であった。
体に悪寒が走る。
目の前に立つ王子の殺意に色が着く。
何故か、定はそれが見えた。
見えるはずのない感情の起伏であるはずなのに、彼女にはハッキリと縦縞王子の黒い殺意を感じ取る。
「あーあ、せっかく、遊んで上げてたのに。なんで、話を聞かないんだろうかな。もう、いいや。教えてあげる、私の能力は並行世界を縦の線と横の線で干渉する事。だから、私がパチリと指を鳴らせば、その瞬間に、君たちの体に束ねてある因果にナイフを突き立て、それを可視化させて君達の体に刺している。訳がわからないよね? だから、身をもっと体験してもらおうと思うんだ」
悪魔は囁く。
その体に宿す、因果を込めて、立ち塞がる法の番人を嘲笑うかの様に力の全てを見せつけた。
「接続、両面宿儺」
放たれた言葉と共にパチリと指を鳴す。
肆呂の手にナイフが刺さった。
パチリと指を鳴らす。
玖呂の足にナイフが刺さった。
パチリ、パチリ。
首、腕。
パチリ、パチリ、パチリ、パチリ。
太腿、肩、首、腕。
腕が転げ落ちた。
双子の腕が互いに同時に落ちていて、それを見て、彼らは自らに迫る死を理解した。
「それだよ、それ。その色だ、ヘェ〜、君達は二人で一人だから感情も混ざるんだ」
定は目の前で子供達が切り裂かれるのを見て、怒りに身を任せ、王子に襲い掛かるもそれすらも彼女の指鳴らしとナイフが三つほど肩と足に刺さり、止められた。
パチリ、パチリ。
顔、目。
突き刺さった途端、双子は血の涙を流しながらも自分達を救おうとしてくれた定に感謝をし、その訪れる死を受け入れようとする。
「君達は平穏な死が訪れると勝手に勘違いしてる様だね。君達に訪れるのは過激で、刺激的で、体験したことの無い、ドン底の死だ。ゆっくりしていってね」
その一言を理解できるような意識は残っておらず、双子はされるがままに弄ばれる。
パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ。
「やめろ、やめろぉ!!!! これ以上、あの子たちを!!! 弄ぶなぁ! たのむ!、やめてくれ! もういいだろ! 私の、私の負けだ! だから、もう、それ以上、傷つけないでくれ」
鳴らした音の数以上にナイフは双子の体をバラバラに刻んでおり、その定の声を聞いてもなお、王子は指を鳴らし続けた。
そして、双子であった肉塊と呼ぶしかなくなってしまった物を定の目の前に置き、それを見せつけながら、彼女にトドメを刺すために指を鳴らす。
パチリ、パチリ、パチリ、パチリ。
体の関節が途切れる。
五体がもがれ、じわりじわりとなぶられる。
声すら出ない。
地を這うを虫を見下す様に、ゴミを見るかの様に興味無く視線を寄越すもそれには全く唆られず、最後の言葉を吐き捨てる。
「定、君が最初からこれを見せてくれれば、彼らも苦しまずに済んだかもしれないね? 」
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