十七章 hey say 狂乱 舞 其の参
歪は始まり、彼らの戦いは更なる混沌へ。
法を秩序とする者、死を悦とする者。
相反する者同士の決闘が始まる。
*3*
「ここか〜? 祭りの場所は〜?」
縦縞王子はワクワクしながら目の前の建物を見て声を上げた。
そこは街きっての商業施設であり、そこに着くや否や、肆呂と玖呂は王子目掛けてここまで我慢していたモノ、全てをぶつける様に互いの腰に差していた武器を抜くと襲いかかる。
二人の刃は鋭く、研ぎ澄まされており、それは王子の首を確実に取れると彼女に自身に思わせるような気迫があった。
しかし、それを王子は腕で簡単に、最も普通に、平静を保ちながら二つの刃を手で止めた。
それはあまりにも日常茶飯事であるかの様に止められると双子は渾身の一撃を止められた事を理解するのに時間がかかる。
その間、コンマ数秒。
脳が理解するまでの瞬く間。
王子は舌を出し、手から血を流しながら口を開く。
「幻想武装」
王子の言葉に応じて、彼女の体が布の様なモノで包まれると姿が見えなくなる。
刃はまだ握られている感覚があった。
故に、引くことなく、そのまま二人は押し切ろうと力を強く込め、前を進んだ。
仲間を殺された怒りと自分達の気分を害した事。
なにより、自分の兄妹へと向けられた気味の悪い感情を全て力に変えて二人は進む。
しかし、そこから腕には唐突にナイフが二本ずつ刺さっていた。
二本のナイフは何のモーションもなく刺さっており、それを見た双子はすぐに冷静になると王子から距離を取る。
「おいおい! どうしたんだい?! 私と君達との心の距離はここまでの歩いた道でなくなったんじゃないのかい?! 」
「肆呂! とりあえず、あの人の場所へ行くぞ! 」
「了解、こいつは思ったよりヤバいかもね」
双子はすぐにナイフを抜き取り、その場に捨てると走りながら商業施設の中に入って行った。
それを見た王子はワクワクしながら彼らを追いかける。
「鬼ごっこかい!! いいね! なら、やろう! 楽しみだ! 君たちはどんな色で鳴いて、どんな色を見せてくれるのかな! 」
双子は駆ける。
それに追われながら絶対に勝てると踏んでいる彼がいる下へ。
*1*
「リコ! もう! 心配したんだから! 」
そう言いながら有紗はドアを開けて彼女を招き入れるとグラスを渡してオレンジジュースを注いだ。
「ごめん、有紗に連絡しようと思ったんだけど学校の行く準備をしてから会った方が良いかなって」
注がれたジュースを躊躇いなく飲み干すと有紗は再びそれに橙色の液体を注ぎ、口にピザトーストを放り込む。
「正直、昨日倒れてずっと一緒にいようと思ったんだけど看護師さんに断られちゃって。でも、本当に元気そうでよかったよ。何かあったら私、気がきでならなかった」
「そんな大袈裟な。多分、貧血。うん、普通の女子高校生だから貧血で倒れちゃったんだ。だから、安心して〜」
舎人子はそういうと再びコップの中身を空にして有紗を落ち着けさせ様とした。しかし、それに有紗は気付いており、真剣な表情で口を開く。
「リコ、無理しないでいいんだよ。疲れて倒れちゃう事もあるだろうし。それも普通の事なんだよ。リコは普通に生きれてるからそんなに気にしなくてもいいんだよ」
その一言を聞き、舎人子の心を軽くさせてくれる。差し伸べられた救いの言葉の様に感じ、それに応じようと声を出そうとした。
ティロン。
二人のスマートフォンから大きな音が鳴った。
「大切な事言おうとしたのにタイミングの悪い連絡!! 」
舎人子は腹を立てながら怒りの矛先を自分のスターフォンに向け、それの画面に光を灯す。
有紗もまた、それを見ながら自分のスマートフォンを手に取るとロックを解除し、連絡の中身を確認した。
「え? 有紗、これって、どう言うこと?」
舎人子の戸惑いが言葉に現れると有紗もそれを見て驚愕する。
「嘘、なんで? 」
***
早朝の生徒会室。
しかし、そこには重苦しい空気が流れた。
「朝早くからすまなかった、二人とも」
イグザはそう言うと目の前に淹れていたカップの二つを役員の手前に置いた。
部屋の中には珈琲の香りが立ち込める。
二人の役員も目の前に置かれた珈琲に手を取り、それを飲んだ。
口内に苦味が押し寄せるも、そこから鼻を抜ける様なスッとした香り、そして、苦味を際立てる様な酸味が深く濃い、味わいを生み出した。
その味に雪音は舌鼓し、思わず声を上げる。
「イグザの淹れる珈琲美味しい〜。私、紅茶は美味しく淹れれるんだけど、珈琲は香りが立たなくて困っているのよ〜」
「ふん、当たり前だ。俺の淹れる珈琲は豆も、挽き方も拘り抜いてるからな。今度、淹れ方を教えてやる」
「雪音先輩、会長、今はそれどころではありません。とりあえず、現状を把握しませんか? 」
「ふむ、そうだな。今、現在、ディヴィジョン内で起きた事に関して話すか」
三人は自らのスマートフォンを前に出して、その事実が本当であったのかを確かめる。
そこに写されたメッセージは同じ事を示されており、それを見たイグザは腕を組みながら考え事をした。
「やっぱり〜、同じこと書いてありますね〜」
「でも、これで敵対する相手が減ったとも捉えれるのではないですか? 」
「たしかにそうだ。だが、それ以上に恐ろしい事が起きているのが現状だろう」
再び珈琲を口に挟み、覚悟を決めるとイグザは再び口を開く。
「二人とも身勝手で悪いが今日で、ディヴィジョンを閉廷させる。今日、新卓有紗を呼んでそれを伝える、最終決戦だ」
*3*
笑う、微笑う、嗤う、咲う、破顔う。
笑いながら双子を追いかける。
白と黒。
二つの色を追い求め、王子は疾走する。
「肆呂! ヤバい、追いつかれるぞ! 」
「そんな事、わかってるって! 」
背を向けていた二人は踵を返すと王子に向かって走り出し、鞘に収めていた刀を抜く。
「接続、黒刃」
「接続、白刃」
二つの刃を互いに合わせ、一糸乱れぬ斬撃を生む。
「「灰咲」」
二人の斬撃は白と黒の色が混ざり、灰と化す。
斬撃を王子はナイフで対応し、受けると得物の刃が欠け、彼女の体に傷をつけた。
「おっと、血だぁ〜。ふふふ、血だ! 誰の血? 僕の血? 私の血?! それとも、君達、二人の真っ赤な血? 」
肆呂の体に一本、玖呂の右肩に一本。
ナイフがいつの間にかついており、それを見ながら王子はケタケタ楽しいそうに笑い転げた。
「何が起きた分からないって表情だね! ふふふ、そりゃそうだ! 君達は私の体に刃を向けた。それなのに傷をついたのは自分達! あはは! ビックリしたかい? ビックリしたよね! でも、安心して! 君達の刃はちゃんと体に刻まれた! ほら、見ておくれ! 」
王子は彼らの斬撃が当たっている事を見せつけるも双子はそれに反応を示さず、すぐさま、彼女との距離を詰めて、攻撃を放つ。
白い刃は彼女の首を、黒い刃は彼女の腕を。
狙いを定めて容赦なく振るう。
しかし、その刃の連撃をいつの間にか手に握られたナイフを使い、簡単に受け止めた。
そのナイフは短いながら二つの刃をしっかりといなし、攻撃の一切を受け付けない。
「おいおい! さっきのヤツをおくれよ! 肆呂! 玖呂! 」
「「勝手に人の名前を呼ぶんじゃない!! 」」
二人の叫び声に応じてか、刀を振るう速度が上がるもそれすらも最も簡単に王子に防がれる。
そして、一瞬の隙を突き、いつの間にか、肆呂の首元にナイフが迫っていた。
カーン。
音が鳴った。
何かを叩いた甲高い音が鳴り響くと肆呂の首元にあった刃を玖呂が何とか弾き飛ばし、二人は王子から遠かる。
服屋からその甲高い音が何度も鳴り響き、そこから一つの影が伸びた。
その影は徐々に形を帯びて来て、童顔の垂れ目で王子を睨みながら、自らの身長同様の長い赤髪を靡かせると、それは冷静な口調で喋り出す。
「法とは秩序を保つモノである。故に、私はそれに順次、それに従い、それに沿う」
「君は、一体何者だい? 」
笑いが止まらなくなる程に、王子は高揚する。
目の前に立つそれが、自らを裁こうとする存在で、何度もテレビで見た者と同じ色をしていた事に、興奮を抑えられずにいた。
逆に、法を語る者は手に持つガベルで再び、モノを叩き、甲高い音を鳴るすと冷静で、揺らぐ事なく、その問いに答えた。
「私は万魔。ディヴィジョン、第三勢力であるorderの長であり、貴様に裁きを下す者だ」
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