十三章 救世の騎士王 其の玖
雷纏いて影を撲つ。
一佐vs舎人子!
佳境へ!
一佐は怒りに身を任せ、並行世界に刻まれた力を解き放つ為、魔術言語を口にする。
「接続、雷撃乃突撃不死兵」
武器が纏っていた雷は体に回り始めるとバリバリと音を立て、二つの凶器を携え、黒い剣士に向かい走り出す。
それは目にも止まらぬ速度と轟音を立て、暗闇の中を駆け巡ると舎人子の体に一直線で突きを放った。
道が出来た。
蘭一佐がその場を駆け抜けた事により、地面は抉られ、目に見える様な道がそこには出来上がっている。
舎人子の目ですらそれは追えず、大剣諸共体は宙に浮き、物理法則に則りながら吹き飛んだ。
(あれ? 体、宙に浮いてる? ヤバい、今、何故か頭の中がグチャグチャになって何も考えられてなかった。最近多いなこう言う事)
吹き飛ばされた体は止まる事なく、舎人子自身も止めようとする事なく思うがままに飛んでいく。
壁にぶつかり止まると思った瞬間、その瞬間を一佐は逃さず再び道を作った。
二度目の道と鳴り響く轟音。
一佐はこれで決め切ろうと先程とは変わって舎人子を壁にぶつけながら突き進んだ。
町の壁を容赦なく突き破り、邪魔する者全てを蹴散らす様に穴を開ける。
揺られる頭と雷による感電は舎人子の体を動かせなくすると一方的なまでの暴力で一佐は彼を蹂躙した。
突き進んだ先にあったとある施設を機に彼女は突き進む出力を抑えるとそこに舎人子の体を投げつける。
そこは町、唯一の図書館。
写身であるミラーワールドでもそれは同じであり、あまり大きく無い図書館の壁が突き破られ、大剣を持った舎人子はその場にそぐわない姿で放り込まれた。
視界がクラクラして目がチカチカする。
舎人子はまとまらない思考をなんとかして保たそうとするも体に落ちた雷により、それすらも不可能となっていた。
(なん、なの。もう、ちゃんとつよい。この世界でもわたしって普通の女子高生なんだ。あー、有紗の為にたたかいたかったのにくやしいな)
そんな事を思いながら図書館の本棚に身を隠し、体を回復させようとする。しかし、それを蘭一佐は逃がさない。
銃剣に雷を溜め込む。
バチバチそれは音を立てると準備が出来た瞬間に迷う事なく引き金を引く前に口を開く。
「雷撃乃廻天砲」
三度の轟音。
壁から放たれた雷の砲撃は壁を貫通し、焼き払う。
舎人子は本棚に隠れており、なんとかそれを避けていた。
「出てこいよ、舎人子! お前が生きてんのは分かってんだ! ここで決着といこうじゃねえか! 」
一佐は見た目は女にも関わらず、口汚く声を上げる。
彼女は理解していた。
舎人子と言う者がこれくらいで終わるヤツでは無い事を生物としての勘で理解しており、穴が空いた図書館に本来とはちがう入り方で入館する。
それを聞いた舎人子は少しだけ笑うと自分の頭が徐々に冴えてきた事を実感し、作戦を立て直す。
すると、自分がイグザと戦った時に使った技を思い出した。
影の操作。
彼は再び影に手を置き、自らの影を動かすと武器に影を纏わせた。
(うん、頭が冴えてきたおかげで思い出せた。多分、これが私の能力なんだ。魔術言語っていうのは分からないけどこれならあいつに勝てる)
舎人子は穴から入館した一佐を感知すると自分と彼女の位置を確認し、覚悟を決めて武器に影を纏わせて一直線で突撃した。
五つほど合った本棚を突き破りながら一佐の意識の外からの攻撃に彼女は最も簡単に対応する。
しかし、彼女は慢心なく、驕りもなく、ただ自分の前に立つ舎人子を全力をもって叩き潰そうとしていた。それ故に、音を立てながら自分目掛けて突進してきた舎人子に対して大剣のリーチを理解した上で余裕を持って二つの武器で受け止める。
大剣は銃剣と刀に止められ、月光が二人を照らし、彼らは再び邂逅を果たした。
一佐は既に次の攻撃の考えをしており、動き出そうと頭で理解するよりも早く動いていた。
その一言を聞くまでは。
「伸びろ、影」
大剣は銃剣と刀に止められており、そこから動かす事は出来ないと一佐は踏んでいた。
だが、そこに小さな誤算があった。
有紗が魔術言語の習得をしていないと言っていたので彼女は舎人子は自分の固有能力を理解していないと思っていた。
自分の攻撃を受けて尚使っていなかった事を見てそれを確信してしまい、彼が固有能力を使えないと勝手に思い込んでしまっていた。
故に、大剣が影を纏っている事を知らずに二つの武器で受けてしまう。
影は舎人子の命令に沿って、大剣の剣先から伸びた。
一佐は急に伸びた大剣のリーチにより、避ける事が出来ず、肩に切り傷が生まれると舎人子は彼女が自分の能力を使えないと思い込んでいた事を理解し、再び大剣を振るう。
影は纏われたままの大剣は一佐に襲いかかり、彼女はそこで初めて回避と言う行動を取った。
すぐに舎人子に対する評価を立て直し、次の動きに転じようと考える。しかし、それは悪手であった。
「唸れ、影」
一佐が考えるよりも速く、舎人子の一言は速く放たれ、目の前にあった大剣は太く鋭く尖っており、防御を取っていなかった彼女の体にモロに当たった。
メキメキと音を立て、壁にぶつかると共にそこに人型の穴を空ける。
図書館の壁を突き破り、レファレンスカウターに一佐の体が転がると自分の体の痛み忘れる為に乱れる呼吸でなんとか呟いた。
「雷撃乃不死兵」
雷撃による強制的な感覚麻痺と肉体再生。
電撃による痛みは伴うものの彼女の体はすぐに戦闘を行えるまでに回復しており、すぐに立ち上がった。
脳裏にフラッシュバックする。
新卓有紗に負けた記憶が。
あの時、覚えた屈辱と彼に対するほんの少しだけ湧いた知らない感情。
雷撃により頭が回らなくなっていた事を察するとすぐに考えるのをやめて、舎人子がいる場所へと向かうおうとする。
「なんで追撃しなかった! 舎人子! 俺を、俺を侮辱してるのか!? 答えろ! 」
一佐は苛立ちを露わにして、舎人子が姿を現すのを待った。
吹き飛ばされた先からは返事も人の気配もない事を理解すると再び銃剣に先に雷を集め始める。
先程よりも巨大な雷の集合体が生まれており、それを放って図書館を焼き払おうとしていた。
引き金が引かれる直前。
それは空から嫌、図書館の天井、建物の外から振り下ろされた。
黒い大剣。
それは正しく舎人子のモノであったが見た時より比にならないほどの巨大な影を纏ったモノであった。
ボロボロの体を無理矢理使い、筋肉繊維が千切れる音すら無視をして、一佐を、彼女を潰すために舎人子は声を上げた。
「図書館では、お静かにって言われただろう!!! 」
「?! 」
一佐の驚きを置き去りに建物がバキバキと音を立て、崩れ落ちて行く。
銃剣の引き金を引くよりも速く、一佐は逃げる選択をするも崩れるコンクリートが容赦無く彼女の体に襲いかかった。
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