幕間 鏡面世界のobserver 其の弍
観測者の憂いと望み。
交差するは双子の思惑。
*2*
「なんだ、あれは? 」
管理者は動揺した。自分が見ている舎人子がそこでは知らない姿をしている事に。
幾分かの沈黙から彼は何故その様なことが起きたのかを考える。
「もしかして、そうなのか? あの舎人子は舎人子であって舎人子では無いのか? 」
独り言を呟き、ユグドラは初めて起きたイレギュラーに戸惑いつつも、それに希望を見出せるのではないかと思い始める。すると、その背後からクスクスと笑い声を上げ、メイド服に身を包み、踊りながら双子の天使が現れた。
「ねえ、ねえ、ユグドラ」
「ねえ、ねえ、ユグドラ」
「「今、希望を見出したよね? 」」
双子は踊りながらユグドラの前をクルクルと舞いながら、突然水色の髪の天使がパチリと指を鳴らし、テーブルとティーセットを出す。そして、黄色の髪の天使の手にいつの間にか現れたティーポットから、カップに茶を注ぐとユグドラに手渡し、声を上げた。
「らしくないね、ユグドラ」
「らしくないよ、ユグドラ」
「「君が希望を見出すなんて! 本当にらしくない! 君は神に選ばれた被害者で! 遊具だ! 遊具は遊具らしく神に遊ばれればいいのに! 」」
「ふん、お前らももういない神を、俺に殺された、いや、僕が殺した、いや、私が殺した、チッ、あいつがこのゲームに参加してから記憶が混雑するな」
彼女らに煽られ、それをいつも通り返そうとするも、頭にかつての自分の記憶が入り込み、自分自身の存在が不透明になっているユグドラは言葉を詰まらせる。それを見た双子の天使は更に口を開き出した。
「あー、もうダメだね、壊れ直前」
「どうせ、あなたも神の玩具なのに」
「「何でそうも諦めが悪いの? 」」
頭の痛みが和らぐことなく、いつも以上に、かつて以上に、その痛みが容赦なく襲いかかる。しかし、それでも、ユグドラは、そのゲームの管理者は、一人の友を救うために、入り込む痛みを裂き、その言葉に抵抗した。
「お前達はいつも同じ事ばかりだな? 他の言葉を習わなかったのか?それとも3000回のループでおかしくなったのか? どっちでもいいが、お前らがいくら止めようとも僕は一人を救うためにこの世界を何度でもやり直す。お前らは以前の管理者に作られた聖遺物。それ如きが人の思いを馬鹿にするな」
「「……」」
束の間の沈黙に耐えきれなくなったのか双子の天使は何も言わずに姿を消すとそこにはテーブルとティーカップが残り、それをユグドラは痛みを紛らわすために飲み干した。
*2*
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