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八章 救世の騎士王 其の肆

戦士は美味を欲する。

食事は必須であり、そこに広がるコースの数々。


接続(コネクト)戦士(ヴァルハラ)()食卓(スケール)


前菜(アントレ)


 少女の呟きは自らが握る斧と因果律を繋ぎ合わせ、その異能を舎人子(トネリコ)へと見せつける。


 巨大な斧を少女は唐突に舎人子(トネリコ)目掛けて、彼女が小太刀を投げた時同様に投げつけた。それは小太刀であった故に投擲であり、握られた得物は巨大と呼ぶに相応しい斧で、舎人子(トネリコ)は急いでそれを避けようと動き出す。


 瞬間、斧は投げられた時よりも遥かに巨大なモノとなっており、背後にあった木ごと、いや、公園の地面ごと、凡ゆるモノを壊しながら舎人子(トネリコ)目掛けて一直線で飛んでいった。


 辺りの木を、モノを吹き飛ばし、公園というモノがあった痕跡諸共吹き飛ばす。斧は目的に到着したのか自らそこに突き刺さり、少女は笑みを零しながら辺りを見渡した。


「出てこいよ、オイ。生きてるのは知ってるからよ」


「あっそ、ならこれならどう? 」


 斧の影から小太刀が投げられるとそれをもう一つの斧で弾き落とす。すると、その背後に舎人子(トネリコ)は唐突に現れると死角から少女の首に小太刀を差し向けた。


口直(ソルベ)し」


 少女の一言で一瞬にして斧が消え、投げる動きをするも、そんなことはお構いなしに舎人子(トネリコ)は小太刀で彼女の首を取ろうとそれを無駄なく振るう。


 しかし、舎人子(トネリコ)の体が唐突に何かにぶつかり吹き飛ぶと少女はそれを見ながら再び魔術(コード)を口にした。


(ヴィアンド)


 次の瞬間、舎人子(トネリコ)の体から先程まで消えていた斧が急に現れ、吹き飛ばされていた体をなんとかそらすもより大きくなった斧の質量に耐え切れず、地面にめり込んだ。


 押し潰されたと思われた体は一歩手前で免れるも、片足が地面に斧と共に突き刺さる。埋まった足は悲鳴を上げ、受けたことの無い痛みが走り出す。地面に足が埋まるという事態に対処が出来ず、声を上げるもそれが誰かに届く筈はなかった。


 ミラーワールドの公園にて少女と舎人子(トネリコ)は対峙し、彼女は一日二度も死が近付き手招きしているのを感じた。


(左足が潰されてる。体から斧が巨大化したからかなんとか反射的に体を反ったんだけど痛いなコレ。どうしよう、このままだと殺されるだけか)


 舎人子(トネリコ)は自分の置かれている状況を理解するも自分の不利を覆す手段を見つけることが出来ず、諦めすらも考え始めていると斧の主人が喋りかけてきた。


「おい、なかなかに面白かった。俺に傷をつけたのはお前が初めてだ。名前だけは聞いてやる名乗れ」


「なんでそんなに上から目線なの? 」


「上に立つ者だからだよ。俺は常に上に立ち続けなければならいからな。仕方ない、なら、俺から名乗ろう。お前を殺す男の名だ、覚えておけ。俺の名前は早乙女(サオトメ)イグザ。このゲームに勝利する者だ」


 イグザは自ら名乗り上げるとそれを聞いた舎人子(トネリコ)は時間を稼ぐ為に彼女に自分の名前を告げることにした。


「私の名前は鏑木(カブラギ)舎人子(トネリコ)。そうね、あなたを阻む者かしら」


「ふん、生意気だな。しかし、女の格好で女みたいな名前。お前、現実だと男だろう? 偽名か何かか? 」


「違うわよ、私は現実世界では普通の女子高生」


「どう言うことだ? ミラーワールドでは全てが反転する。俺だってこんなちんちくりんな少女の形じゃないんだぞ? お前、まさか特異点か? それならあの腕にも合点が行くな…。俺はやはり運がいいらしい。ここでお前と出会えて正解だったよ」


「意味わからない事言わないで。もう、やるならサッサとやってよ」


 舎人子(トネリコ)の諦めた声でそう言うとイグザは斧の近くに進み始めた。そして、彼女にトドメを刺そうと近づき、手斧を取り出すと彼女の首にそれを振り下ろす。


 振り下ろされた斧により、ゴロンと言う音共に舎人子(トネリコ)であった体から力が抜けるも下に転がり落ちていた彼女の頭が黒く染まりイグザに目がけて襲いかかった。


 唐突の奇襲であるにも関わらずイグザは簡単に対応し、それを軽々と撃ち落とすとその横から首を落としたはずの舎人子(トネリコ)が何の傷もなく現れ、小太刀を振るう。


「へえ、小賢しい技を持ってんだな」


 舎人子(トネリコ)の二度に渡る奇襲を受けるも全く動じる事なくイグザは手に持っていた手斧を振るうと舎人子(トネリコ)も彼女と得物同士を打ち合いながら喋りかけた。


「名前喋ってる時に影に手をつけたら動かせたからやってみたけど全く効いてないから流石に凹む」


「生憎、それくらいで動揺するほど柔な鍛え方も育てられ方もしてないのでね。早乙女家たる者、常に上に立ち、凡ゆる者を導かん。そう教わってから、俺は一度たりとも余裕と努力を無くした事は無い」


 手斧と小太刀は互いを打つけ合いながら、両者の攻撃への意識を怒涛の勢いで押し上げていく。そんな中、イグザは彼女の左足から流れる血に気付くも、それを指摘する事なく手斧を振った。


 刃と刃を交える度に火花が散り、一歩も引かない攻防が繰り広げられる。


 異能無しの真っ向勝負。


 互いに手数は二つの得物。


 舎人子(トネリコ)の集中力は再び最高地点に達し、その動きは殺意を最適化させた。影がイグザの足を拘束し、彼女の両手首に小太刀を振るう。


(ポワソン)


 勝利の目前、イグザの一言により、その戦況は覆される。


 握っていた手斧が投げつけた二つの斧の内の一つよりも大きくなっており、それを迷わず舎人子(トネリコ)の無防備な体に振るった。


 黒いスパッツの様なモノは破れ、舎人子(トネリコ)の腹に切り傷が生まれる。


 人体の内部にあるモノを溢れさせないための筋肉を刃が突き破り、そこから赤い血と腸の一部が外の世界へ現れた。


(あれ? お腹、裂けてる? いたいな、ああ、もう、少しだったのに。てか、思った以上に内臓が飛び出るのって痛いんだ。母さんと父さんもこんなに痛い思いしたのかな。ゲームに参加して一日で死にそうになるなんて。ごめんね、有紗(アリサ))


 意識が朦朧とする中、その様な事を考えるも目の前が赤く染まり、思考が遠ざかる。


 舎人子(トネリコ)の体から血が流れ、それをみたイグザは彼女に本当にトドメを刺そうと近づくもその場に立ち尽くし考え事を始めた。そして、少しして幻想武装(ファンタズム)を解くと満身創痍の彼女に向けて口を開く。


舎人子(トネリコ)、俺はお前を殺したい。だが、ここまで激らせたのはお前が初めてだ。もう少しだけ成長を待ってやる。次、会う時までに魔術言語(コード)を習得しとけ。そうすれば、お前は更なる強さの深みに至る」


 イグザはそう残し、その場をすぐさま後にすると血が止まらない舎人子(トネリコ)だけが倒れていた。


 そして、舎人子(トネリコ)の意識も深い澱みへと落ちてしまう。


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[良い点] 冒頭の文章の書き方が好きです!!!! 頭の中で『マギアレコード』というアニメで見た演出が思い浮かびました。さらにそこから並行世界での激しく疾走感のあるバトルシーンは凄いと思います。 技名の…
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