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帝国陸軍将校、大陸を駆ける   作者: 魚河岸ボブ
第1章
9/52

笹原甚太郎はスカウトする

甚太郎の目の前に現れたのは、左手と左目が無く、酷く荒れた身なりの男だった。例の「おっかないの」に間違いないだろう。全身から殺気のようなものが出ている。しかし、甚太郎にはあまり敵意が感じられないような気がした。

男は甚太郎を見つめて言った。

「芋、1つくれ」


もしや新手の追い剥ぎかと警戒していたが、男が懐から小銭を取り出すと、やおら甚太郎に押し付けてきた。

「これで足りるか?このところ碌な物を食べてないのでな、大きめのを貰えると助かる」

「ああ、ちょっと待ってくださいよ。大きめのを出すから」

これは、あまり危険視しなくてもいいかもしれない。芋を渡すと、喜んだような顔を見せ、早速食べ始めた。

「ああ、美味い…」

一言呟くと、また元の表情に戻り、妙な迫力を纏っていた。

甚太郎は、もしかしたらこれはチャンスなのかもしれないと思い、男に話しかけた。

「お客さん、腕っぷしはかなりのものと思うけど、用心棒になるとしたら、お給金はどれくらい取りますか?」

唐突な質問を受けた男は、右目を見開き固まった。ややあってクックックと笑い出し、

「金では雇われんぞ。好きで喧嘩している訳ではない」

と答えた。甚太郎の表情が曇る。

しかし、

「美味い芋を毎週食わせるというなら、何かあったときに呼ぶといい。助けてやる」

凄まじい殺気を垂れ流しながら男は笑った。

これはもしかしたら失敗だったのかもしれないな、と甚太郎は震えそうになるのを必死で堪えた。


甚太郎は男から色々と情報を聞き出した。戦争で手と目を失ったらしいこと、普段は飯屋や銭湯の雑用を引き受け、たまに迷惑をかけてくるやくざ者や酔っ払いを追い払っていたら次第に怖がられるようになったこと、殺し屋や用心棒をやっている訳ではないこと…一番驚いたのは、自分の名前を覚えていないことだった。

「包帯を体中に巻かれて、手と目が片方無くなっていた。自分の名前もわからない。いつの間にか気付いたら福岡にいた。俺は何者なんだろうな」

甚太郎は掛ける言葉を見つけることができなかった。

「まあ、気にするな。手も目も片方ずつ残ってるし、案外仕事もできる。名前がわからないと言っても思い出せないだけで、今はヤスと呼ばれているしな。来週も美味い焼芋を楽しみにしてるぞ」

「毎度あり…」

右手をヒラヒラさせて立ち去る男の後ろ姿を、甚太郎は複雑な思いを抱きつつ見送った。

そろそろ回想ですが戦闘シーンが出てきます。

初心者なので描写の拙さはご容赦くださいm(_ _)m

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