卒業、未来への第一歩
いよいよ甚太郎が尋常小学校を卒業する時が来た。本当のことを言えば、上の学校に進んで、せめて中学校は出て、頭を使う仕事に就きたかった。畑仕事は嫌いではなかったが、もっと何か出来るのではないか、自分にどんな事ができるのか、それを試す機会が欲しかった。
学校なんて、終わってしまえばあっという間だった。
本来であれば、すぐにでも畑仕事や内職に精を出し、暇な時は働きに出るという労働者らしい生活になる筈だったが、「畑仕事に支障が出ない限り自由」という約束を父親と交わすことが出来たため、甚太郎は独立のための資金作りに精を出すことにした。
自宅の片隅で使われなくなった竈を使い、畑で作った芋を焼いて売り捌く。元手も手間も大してかからず、腹持ちの良い焼き芋で労働者の腹を満たす。これが手っ取り早く金を稼ぐ為に考えた方法だった。
焼き芋といっても、軽く塩味を付けて味にひと工夫した。季節によって芋の種類を変え、安定して売れるようにする。自分の畑で賄えない分は、近所の農家から仕入れることも調整済みだ。
さあ、新しい生活の始まりだ…!
ちょっと締まらないなと思いながら、甚太郎は焼き芋を積んだ荷車を曳き、街に向かって歩き始めた。
遂に小学校卒業、波乱の人生に突き進みます。