地域の守り神
あれー? あらら?……んんー? 今日はカミさまいないのかなあ。 あ、掃き掃除してる人がいる!
——お……おは、おはようございます! あの、 お手伝いしましょうか?
いえいえ、 大丈夫ですよ。
あの、 今日は、 カミさまは来ていませんか? あっ、その……。
神様? 神様は、いつもそこにいらっしゃると思いますよ。
そ、 そうですよねー! 神様はいつもいますよね、 ここ神社なんだし、 えへへ。
まあ……たまには留守にされるかもしれませんね。
え、 留守? ……あ! この神社の方ですか?
いいえ、 私は違いますよ。 ただたまにこうして掃き掃除させてもらってるんですよ。 ここは木が多いでしょう? 葉や枝や木の実が落ちて溜まりますから。 夏は台風で風の強いときはとなりの竹林から笹も飛んできたり……管理の方は別に居ますが、 常駐じゃないので、 誰かがやらないと。
そうなんですかー! 人がいないのにいつも綺麗だからどうしてかなって思ってました。
そう……普段はゴミが出るほど多く人が集まる神社でもないですからね。 もうすぐで修復工事も始まりますし。
あ、わたしも募金、 寄付? しましたよ! 九月から始まるって……。
着工は早まるようですよ? 予定より早く寄付金が集まったそうです。 八月中には足場が組まれるとか……。
えっ! もう始まるんですか! そうなんだ……。
ええ、 神社関係者の方たちがもう五年もかけて修復事業の計画を進めてきたんですよ。 見た通りで老朽化が進んでいるでしょう? 大きくはない神社だけど地域の守り神ですから。
地域の守り神……。
はい。 この拝殿の裏にある本殿はご覧になりましたか? 神様がいらっしゃる場所ですがそこの基礎がボロボロになっているんです。 神様のベッドが傾いてしまっている状態ですよね。 そしてその周りを覆っている建物はぜんぶ建て替えて新築するんですよ。 いまは隙間だらけで雨も風も鳥でも中に入り放題ですから。
そ、 そんなになんですね。
だから逆に、 中から神様がお出かけして留守にしていても不思議じゃありませんね。
あはは、 そうですよね、 そっかあ……。
ほら、 すぐそこ、 横から裏手に回れば本殿が見れますよ、 少し薄暗いですが。
わかりました、 早く建て替えて、 綺麗になると良いですよね……あ、 掃除の邪魔をしてしまってすみませんでした、 わたし行かなきゃ! ありがとうございました! さようなら!
いえいえ、 はい、 さようなら。