表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

春5

「やるな伊吹。あの数分で、よくここまでの詰みを読めたな」

「まぁ、いつもやってるのが早指しで、早読みは得意ですから」


「いやもう、得意とかそーゆーのじゃないでしょ」

「まぁ、才能だわな。それも天賦の才だ」

と、僕らの対局を横目で見ていた、柊さんと犬飼さんが賛同するように頷いた。

「ありがとうございます。集中していて、そちらの方を見ていなかったのですが結果は…あぁ」


隣で、勝敗が決したところの場面にしてあった盤面を見て、僕は結果を察した。

犬飼さんの圧勝だった。

「まぁ、そう言うことだ。お前ら、とっとと感想戦して、次の対局するぞ」

そう言って、僕らは感想戦を始めた。


ついでに、感想戦とは対局後に、開始から終局まで、またはその一部分を再現して、その時に着手の善悪や、その盤面においての最善手などを検討することである。これは、プロやアマチュア、高校生同士の時でも行うものだ。


それが終わると、僕らは次の対局へと移ったのだった。






数時間が経過して、犬飼さんが時計を見て言った。

「おい、伊吹。そろそろ買い物に行ったのほうがいいんじゃねーか」

そう言われて、僕も時計を見る。時刻は17時を過ぎていた。


「そうですね。人数が増えたので、その分調理時間もかかりますしね。そろそろ行って来ますね。うーんと、じゃー、この対局が終わったら行ってきます」

僕はそう言って、自分の荷物の整理をする。


「ごめんね、伊吹くん僕たちの分まで追加で買ってもらっちゃって。」

「いえ、全然平気ですよ」

「それで、この一手はどうする?」


そう言って、かなり痛い手を打ってきた。

「う、これは、、、うーん、こうですかね」


「んんん!?」

「おお、これまた絶妙な一手っすね」

「鋭いな。けど、自陣危なくないか?」


「多分大丈夫です。多分」

と僕は自信なさそうに言った。


「こう取って、ここで切って持ち駒は、、、」

と今の僕の対戦相手の柊さんはボツボツと呟きながら考えている。


僕は隣の盤面を見た。

今は、葉書さんと犬飼さんが対局している。形勢は…

見た感じ、犬飼さんが優勢だった。


それを見ていたら、、、、柊さんが、

「よし、多分だけど、これでいけるっす」と僕に聞こえはするがそれなりに小さな声で言って、さしてきた。


僕は、その一手を見て考える。形勢は、大劣勢。持ち駒も歩しかなく、相手陣地に送り込んである駒も少ないこれは、、、

「うーん、厳しいですね。負けました。」

投了した。


「よっし、危なかった。本当に危なかったっす。ふー」

と、柊さんが言った。それを聞いた犬飼さんが、

「おいおい、たしかに伊吹は強いけど、実戦で戦っているプロ棋士がまだプロじゃない、奨励会員に負けるなよ」


「ま、負けませんよ。五回に三回くらいは負ける自信ありますが、、、」

「犬飼さん、俺に刺さってます…」と、葉書さんが呟いた。


その感想戦が終わらせて、僕は将棋会館を出た。そして、家の近くのスーパーに向かった。

「えっと、、、今日の人数は、僕と師匠、犬飼さん、柊さん、葉書さんの5人だから…」

そんなことを考えていた時、ピコーン。と僕のスマホにLINEが入った。内容は、


氷泉:今日家、行っていい?


と言うものだった。

ここで言う、家とは多分、師匠の家だろう。師匠の家には、彼女も何度も来ているので、別に来ても良いだろうが、今日は、他にも3人ほど来ることになっているので、一応そのことを説明する。


伊吹:全然良いけど。今日は、他にも3人くらい来る予定なんだ。それでも良い?

返信はすぐに来た。


氷泉:別に、構わない。今日のご飯は何?


伊吹:今日は、肉じゃがだよ。


氷泉:わかった。今から、そっちに向かうね。


と、ここでLINEで会話を一旦終了した、一応師匠にも


伊吹:今日夜見も晩御飯食べに来るそうです。


と、メッセージを入れておいた。

「ふー、これで六人分になったか」

そう呟きながら、僕は買うものをカゴに入れ、それをレジの方に持っていった。


買い物が終わり、家に着くと時刻は18時を過ぎていた。

多分師匠が今日の対局を終えて帰ってくるのは、20時。それと一緒に犬飼さん達もくるだろうから、それまでに、作らねば。そんなことを意気込んでいると。


呼び鈴が鳴った。そのまま、ドアの方にかけていくと、そこには黒髪で美しく輝いているロングの女の子が立っていた。

「やぁ。どうぞ」


そう、この子が史上初の女性プロ棋士にして、叡王のタイトルを持っている、タイトルホルダー。

そして、僕の初恋の人だ。


そう、僕が言ったことに対して彼女は、

「うん、お邪魔する」

と言って入ってきた。

肉じゃが食べたい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ