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その3 ゆで卵
ゆで卵ですかね、
最近驚いたのは…
台所に行くと、
ふとね、
母がね、
ゆで卵の殻を剥いてるんですよ。
◆
もう婆さんですよ…
ゆっくり剥いているんです…
◆
そして小皿にそれを置いてね、
まん中から箸を入れて二つに割るんですよ。
そしてね、
それにね、
黄身に醤油をかけて、
それをオカズに白米とやるんですよ。
味噌汁は大根ですよ。
真似してね…
食べたらね…
【おっ!】って味だった。
母は半熟とか苦手でしてね、
しっかりと火が通った卵しか食べられないんですよ。
◆
でもね…
なかなかオツな味ですよ。
◆
黄身が乾くほど火が入っていますから、
味噌汁は必ずいりますがね…
卵一個で驚けたらそれは御馳走ですよ。
時々食べたくなるんですよね~
亡き母を思いつつ…
◆
え?
生きてるだろって?
◆
え?
本当に?
◆
見間違えじゃなく?
◆
本当に?
昨日見たって?
◆
生きてるって?
◆
驚きましたね…
それは白目を剥きますよね…
◆
白目というか白身をね…
◆
ちょっとね…
【分からない人】は置いて行きますよ。
◆
【老いて行く】んですから、
ウチの婆さんは…




