その10 大吉秋栗
こうね、
和菓子の世界では【一生一品】って言葉がありましてね。
これまで誰も作った事のない和菓子。
かつね、
作者が死んでも生き続ける和菓子。
毎日ね、
職人達はお客を喜ばせる為にね、
【一生一品】を考えているわけですよ。
◆
で、
アッシも和菓子を考えてみた。
秋の栗と書いて秋栗ですな。
それでね【大吉秋栗】と命名しました。
そう、【だいきちあきぐり】…
◆
こうね、
四角い寒天にね、
甘く煮た大ぶりな栗がね、
沈んでいるんですよ。
寒天は氷のようでしょ?
これから白い冬が来るんですね。
で、寒天に沈む栗。
そう、空から栗が落ちてくる。
秋から冬にかけてね、
子供達は栗を拾う。
いや~懐かしいですな。
子供の頃はよく拾ったもんですよ。
栗を焚き火に投げ込みましてね、
焼かれた栗の熱いこと熱いこと。
実に懐かしいですな。
◆
どうだい和菓子屋さん、
【大吉秋栗】出来たかい?
◆
いいねぇ、
どれどれ?
◆
寒天の色が二層になってるね。
上は雪だって?
いやぁ…凄いもんだね。
想像以上の出来映えだ…
◆
じゃあ、頂きますよ。
◆
おっと、
寒天と栗の食感の違いがいいね。
栗の甘さも丁度いい。
◆
それじゃあ、
寄席で宣伝してくるよ。
◆
えっ、宣伝料?
いやいや、いらないよ。
アッシからお願いしたんだから。
ただね、
一つだけね、
お願いがある。
二十個に一個くらいにね、
砂糖なしで煮たね、
渋い栗を入れて欲しい。
食べたらさ、皆、渋い顔をするだろう?
そしたら皆ね…
苦笑いしてね…
私を思い出すよ。
◆
へっへっへ~。




