その4 ようかん
じゃあ、
それでは、
これからは甘い噺を…
そんな父を見て育った。
十四代の【真打ち噺】
染谷光陰の完全犯罪…
◆
ええ…
【お菓子おかし】ですな…
◆
【いよっ!光陰!光陰!光陰さん!】
【待っていました光陰さん!】
【マスターダイキチ!】
【待っていました、マスターダイキチ!】
◆
おや…
マークにリサも来てたのかい?
皆さんもありがとうございます。
◆
それでは…
皆さん…
いざ…
尋常に…
◆
和菓子といえばね、
羊羮ですね。
このね、
甘い羊羮をね、
黒文字で丁度いい大きに切ってね、
食べてね、
茶をすすり、
【茶息】をはく。
ちなみに【黒文字】っていうのはね、
小さな和菓子用のね、
西洋でいったら小さなフォークですよ。
でね、
甘さの後に、
茶の香気に渋さに、かすかな甘さ。
たまりませんなコレは。
甘いってのは幸せな味ですな。
こうね、
羊羮の艶々した姿はどうですかい。
水も滴るいい男ってね。
かといって女性的でもある。
実に色気がある和菓子ですな。
◆
私はね、
寄席が終わった後にね、
ホッとしながらね、
羊羮を頂くんですよ。
そして、茶を飲んで【茶息】をはく。
これぞ日本の和菓子ですな。
◆
そういえば、
昨日ね、夫婦喧嘩をしましてね、
妻に【あずき】を投げられたんですよ。
ええ、
もったいから、
そりゃあね、拾いますよ。
◆
ふ~
◆
あのね皆さん。
◆
落ち込んでるから、
今日は帰ってもいいですか?




