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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
◇第二部 第三章
80/172

その3 涙四粒③

子供の頃から貧乏でね、

魚なんて月に一度くらいしか食べれなかった。


しかもね、

こんな小さなイワシですよ。


毎日ね、

味噌汁、米に沢庵ですよ。


米といっても雑穀ですよ。



ある日、

父がね、

十三代目【宇刻】がね、

鯛を釣ってきたんですよ。



やることがなくて釣りをしてきたってね。



もうね、ビチョビチョでしたよ。



着物が水浸しでね。


しっかし、立派な鯛でしたよ。



母親が鯛を七輪で焼きましたけどね、

父は食べないんですよ。


私はこっちの鯛を食うってね、

沢庵をかじるんですよ。



そこで母がね、

ふとね、

【いい噺が出来たんですか?】ってね、

父にきくんですよ。



女の勘ってのは凄いもんですよ…



そしたら父がね、

【あぁ、明日見にこい】ってね。



寄席が終わりましてね、

確かにウケていましたよ。

ただ、私は子供だから、よく分からなかった。



舞台袖で…


【宇刻】が母にね、


【どうだ?惚れ直したか?】ってね、


言うんですよ。



母がね、

急にね、

【おめでとうございます】ってね、

父を抱きしめたんですよ。



父の嗚咽、

鳴き声がね、

鼻水をすする音がきこえるんですよ。



【怖かった、本当に怖かった】ってね。


あの【宇刻】がね、

あの【宇刻】がですよ、

声を震わせて…

母の胸で泣き震えてるんですよ。



そうですね、


その日、


父は完全犯罪をやったんです。


つまりね…





父、【宇刻】は十三代目になったんです。




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