その8 タマネギと婆さん
しっかしね~
どうしてタマネギの味噌汁って、
ああも甘いもんなのかね。
タマネギをちょっと厚めに切ったり、
薄く切ったりしてさ。
その時の気分だよ。
そして赤味噌でね~
味噌汁を作ったらそれでいいんだよね。
砂糖を足したり、味醂を足したりしなくてくても甘いんだから、凄いよね。
そして握り飯でもあれば幸せだよね~。
こうね、人生もこうありたいってもんだよね。
グツグツ煮えてる世の中に放り込まれてもさ、ニコニコとあま~くなってるじゃね~か。
灰汁もほとんど出なくてさ。
私もタマネギさんのように生きたいね。
◆
しっかし、店先で婆さんがこういう話をするもんだからさ、急にタマネギが売れてしまってね。
◆
そしたら婆さん、皆が帰ったらアタシに手のひらを向けてね、
宣伝料をよこせって言うんですよ。
えぇ、あの落語家の母親ですよ。
もうね、あの婆さんはタマネギじゃなくてゴボウですよ。
煮たらね、たくさん灰汁が出てくる出てくる。
◆
あの息子にして、この母ありですよ。
何でもね、息子がこの噺をすれば八百屋が喜ぶって、小遣いまでくれるって言ってたらしいんですって。
いや~、怖い怖い。
世の中甘くないね~