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その7 ペリーさんと初鰹
母ちゃん、黒船がね、軍艦が来たよ。
アメリカの軍艦が。
しかも二隻。
しかし、帆もないのに、こいでもいないのに、どうやって動いてるんだろうね。
こいつは大変なこった。
ペリーさんは開国を迫る気だよ。
本気で開国を迫る気だよ。
あれ?
通りすぎた。
さっきも通りすぎたな。
おかしいな。
◆
大吉、
そんなにウニの軍艦が食べたいなら食べていいよ。
回転寿司屋に来たとたん、
そんなに騒がないでくれよ。
皆が見ていて恥ずかしいだろ。
それにさ、
寿司屋の親方とグルだよねアンタ。
アンタが来ると親方は嬉しそうにウニの軍艦を流すじゃないか。
◆
え?
なんだい?
初鰹がまた来たって?
戻って来たって?
そりゃあ初鰹はお高いからね。
誰も取れないから戻ってくるんだろうさ。
ねえ、親方。
あの初鰹は、戻ってきてた。
鰹は足が早いって、すぐに痛むからって言うじゃないかい。
二週も経って鮮度が落ちてるね。
あれは半額でアタシが頂くよ。




