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その2 初代大吉②
え?
弟子の大吉?
◆
とりあえず人ではないわな。
◆
月からでも来たんじゃないかい?
私はそう思ってる。
◆
なんとなくね。
もうね、
もう師匠と弟子ではないんだよ。
友達…
そう…友達だね。
◆
私の前でね、
この漬け物が美味いとか、
この佃煮が美味いとか、
そんな噺しかしない。
落語の稽古にね、
私が演じて見せたりもしましたが、
師匠を前でね、いつも上の空だ。
稽古が終わるとね、
スッと立ち上がって、
茶と和菓子を持ってくるんですよ。
この和菓子が美味いって嬉しそうにね。
【師匠、一緒に食べましょうよ】ってね。
◆
ええ、
だからね、
もうね、
さんざん私の落語を見せた後にね、こうに言ったんですよ。
【だいたい分かったろ】ってね。
【じゃあ、好きにやってみたらどうだい?】ってね。
そうですね、
放り出した…
干したんですよ。
それが大吉の初舞台ですな。