過ぎし日 その8 ○ マークとリサがやって来た
妹のリサです。
日本にもすっかり慣れて、
日本のママさんにお姉ちゃんも出来た。
ただね、あの【マスターダイキチ】の息子さんだけが変だった。
いつも暗い顔でね。
私の兄の顔はね、
【マスターダイキチ】の家に行く度にね、
どんどん明るくなってきましたけど、
【マスターダイキチ】の息子さんの顔はいつも暗い顔だった。
◆
それから私は、
日本の大学に通いはじめて、
夏休みに、
お盆にね、
【マスターダイキチ】のお宅に挨拶にうかがったんですよ。
◆
ちなみにね、
兄は日本で英語の教師をしています。
でね、
兄の普段着は着物ですよ。
ビックリでしょ?
高校卒業の時に、
【マスターダイキチ】から着物をもらってからですよ。
ええ、
子供のようにはしゃいでましたよ。
◆
父はね、
日本の女性と再婚しました。
【マスターダイキチ】の寄席で知り合った女性だそうです。
ええ、週末は【マスターダイキチ】といつも呑んでますよ。
◆
噺を戻しますけど、
私の噺ですね。
そう、大学四年の夏休みですね。
【マスターダイキチ】の家に挨拶にうかがったんです。
日本のお姉ちゃんと、
洋服のビジネスをすることにしたんです。
その挨拶なんです。
そしたらですよ。
庭でね、
【マスターダイキチ】の息子さんがね、
猫にエサをあげながらね、
【ニャアニャア】と言ってるんですよ。
猫も【ミャーミャー】と言っている。
猫に干し肉を与えているんですけどね、
猫は息子さんの手に猫ビンタですよ。
息子さんは【えっ?えっ?】ってね、
慌ててるんですよ。
◆
分かりませんけどね。
ふとね、笑ってしまいました…
それから二年後…
【マスターダイキチ】の息子さんと…
結婚してましたね。