過ぎし日 その4 ○ マークとリサがやって来た
マークです。
あれが本物のディナーでしたね。
こうね、
ママさんのね、
魚肉ソーセージのソテーが美味しかった。
分からないですけどね。
とんでもなく美味しかった。
私と妹にね、
フォークを笑顔で手渡して頂きましてね。
そこでね、私はホッとしたんですよ。
もうね、食べましたよ。
◆
途中でね、
【マスターダイキチ】がね、
私にね。
無言でね、
親指を立てて拳を握るんですよ。
【美味いだろ?】ってね。
もうね、
言葉が通じなくても分かる。
涙がこぼれましたよ。
ええ、
泣きながらご飯を頂きましたよ。
◆
茶碗の米がなくなると、
ママさんがね、
ご飯茶碗にお米をよそってくれて、
私は味噌汁二杯に、
ご飯を三杯も食べましたよ。
【マスターダイキチ】はね、
自分の皿には一切手を付けずにね、
そっとね、
私達にね、魚肉のソテーを渡すんです。
◆
それからね、
ママさんは私と妹を車に乗せてね、
家まで送ってくれたんですよ。
◆
それからね、
多分、
ママさんが配慮してくれたのか、
妹はね、
放課後に児童館に行かずにね、
【マスターダイキチ】の家にね、
いったん寄る事になったんですよ。
そしてね、
私は【マスターダイキチ】の家にね、
妹を迎えに行く。
そしてね、
私の父もね、
【マスターダイキチ】の家でね、
晩ごはんを頂くようになったんですよ。
これもママさんの優しさですかね。
何せウチの父親は、
簡単な料理しか出来ませんからね。
◆
そこからね、
私は日本語を覚えたいと思うようになったんですよ。
◆
心がね、
焦がれるくらいにね、
どうしようもなく熱くなったんですよ。
◆
【マスターダイキチ】の手の温もり。
ママさんの笑顔。
◆
えぇ、今でも忘れませんよ。




