過ぎし日 その2 ○ マークとリサがやって来た
マークです。
【マスターダイキチ】、
京夜のお父さん、光陰さんと出会ったのは、
公園のベンチでしたね。
放課後にね、
妹のリサを児童館に迎えに行ってね、
手を繋いで帰るんですよ。
その日はなぜかね、
二人で公園のベンチに座っていたんですよ。
もうね、
寂しかったんでしょうね。
もうね、公園のベンチで泣いていましたよ。
妹はね、
頭がいいから、ポツポツとね、結構日本語を話せるようになっていた。
友達も出来たと嬉しい顔をする。
でもね、私には友達が一人もいない。
◆
私は正直ね、日本語を覚える気がなかったんですよ。
◆
興味があるのは、【マスターダイキチ】の息子さんが貸してくれた本とか、歴史の教科書、それも江戸時代の挿し絵だけをずっと眺めてた。
◆
なぜだかね、自分でも分からないんですけどね。
◆
そしたらね、目の前にね、
柿渋のね【キモノ】を着たね、
【マスターダイキチ】がね、立っていたんですよ。
◆
怖い顔をしていましたよ。
眉間にシワが走っていてね、
私の顔をね、
怖い顔で見下ろしていましてね。
こんなに怖い人の顔は生まれてはじめて見ましたよ。
◆
でね、
【夕飯はウチで食ってきな】ってね、
おっしゃっていたらしいんですって。
こうね、ジェスチャーでね、ご飯を食べる仕草をして頂いたんですよ。
◆
私はうなずいたんですね。
なぜかは分かりませんよ。
しっかしね、
あったかい手でしたよ。
◆
私は【マスターダイキチ】に手を握られてね、
片方の手で妹のね、手を握ってね、
【マスターダイキチ】の家に連れていかれたんですよ。