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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
第八章 ○演者:染谷京夜
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過ぎし日 その1 ○ マークとリサがやって来た

さてさて、

第十五代目大吉、

染谷京夜でございます。


いやね、

マークとリサの噺です。


そして第十四代目大吉、

【マスター大吉】、父の染谷光陰も出てきます。


さてさて、

マークの父親はね、英語の教師でね。

日本にやって来た英語教師ですよ。


時々ね、

中学や高校の英語の時間に来てね、

ネイティブな発音をね、皆にきかせるんですよ。


当時はそういう授業があった。


それでね、マークは中学一年生。

リサは小学三年生ですよ。


マークの父親と母親は離婚しているらしくてね。


マークとリサは父親に引き連れられて日本に来たんですよ。


でね、

そりゃあ浮きますよ。

金髪にね、宝石のような青い瞳ですからね。


ウチのクラスでも、何かにつけて注目されてた。


何よりイケメンですからね。


ただね、日本語が話せませんからね、授業を受けても分からないんですよ。


分かるとしたら数学と英語と体育くらいですね。

あと美術かな。


でね、

一月二月すると、暗くなっていくんですよ。


そりゃあそうですよ。


でね、

ある日ね、

マークがね、

アッシに話しかけてきたんです

私もね、

相当偏屈でしたからね。

何せ第十五代、染谷大吉になる予定の人間ですからね。


父親、光陰からもね、

【人生諦めろ】ってね、

幼稚園に入る前から言われてますからね。



いやいや、皆さん笑いすぎですから。



でね、ネタを書いていたんですよ。

小噺のね。


でね、

それを毎日父親に見せてね、

本当にボロクソ言われるんですよ。


もうね、暗い顔ですよ。


でね、マークは私のネタ張を見ましてね、涙ににじんだネタ張ですよ。


【これは何ですか】って言うんですよ。


まぁ、確かにそうですよね。

昼休みに一人、鉛筆ではなく筆でね、和紙にネタを書いている訳ですから。


まぁ、

私はね、諦めた顔をしてね、

こう言ったんですよ。


【バッドエンド】ってね。

悪い終幕ってね。



それからね、

なぜかね、

昼休みにマークは私に話しかけてくるようになったんですよ。 


私は英語もろくに勉強してませんからね、

自分が読んでる着物の本とか、

江戸時代の絵が買いた資料を渡してね、

それで終わらせてたんですよ。


ネタを書かなくちゃね、

父親に怒られますからね。

まぁ、いいネタなんて出て来ませんから、

毎日怒られるだけなんですがね。



それからマークは私の本を昼休みにずっと眺めてた。



時々、これは何だってね、

挿し絵を指差して私にね、きいてくるんですよ。

【ホワット イズ ディス?】

ってね、これは何ってね。


まあ、それくらいの英語は分かりますからね。

少しは答えますよ。


【キモノ】とか、

【センス】とかね。


で、歴史の教科書でアッシの持っている江戸時代の挿し絵を見たんですかね、

【エドジダイ】とか、楽しそうな顔をしましてね、アッシに話しかけてくるようになったんですよ。


でもね、アッシはマークと友達になろうとは一切思わなかったんですよ。



アッシにね、

友達が出来るなんて思わなかったんですから。




それくらいアッシは暗い子だったんですよ。





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