その7 江戸前の握り⑦
ここでね、お腹いっぱいってね、
妻と帰るんですよ。
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分かります?
結構これは簡単でしたね。
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でもね、噺を演じる側は難しいんですよ。
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そうですね、【おにぎり】です。
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寿司かと思わせておいてね、
実はね、
そこのね、
白旗印に赤い梅、
田町のね、
【おにぎり屋】の噺なんですよ。
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実はね、結構これはね、落語家にとってはね、難しいんですよ。
【寿司】とかね、
【酢めし】とかね、
【しゃり】とかはね、
禁句です。
【軍艦巻き】かと思わせといて、
【海苔巻き】と表現する。
確かにね、
おにぎりは海苔で巻いていますからね。
禁句は言ってはいけないんですよ。
皆さんの頭で【米がほどける】まで待つんです。
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つまりね、
そんな寿司があるんだってね、
軍艦巻きをね、つまむ姿を演じたりとかしてね。
これは寿司屋の噺なんだってね。
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それからね、
急にね、
お客さんがね、
ふとね、
米がね、
口の中でほどけるようにね…
【あっ、これはオニギリだ!】って噺なんですよ。
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すみませんね、
真打ちですから。
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でもね、
あそこのね、
田町の若い娘さんのね、
おにぎりを食べて思いついたんですよ。
あそこのね、おにぎりは美味しいですよ。
えぇ、
ウチの婆ちゃんですらね、
前の日からソワソワしてますからね。
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あとね、
皆さん今日は食べに行かないでくださいね。
前の日にね、
行くって伝えて下さい。
◆
いえね、
別に予約しなくて食べれますけどね、
前の日からですね、
ソワソワしたくありませんか?
私はソワソワしたいですね。
今日、嫌な事があってもね、
明日の晩はね、
炊きたての美味い【握り飯】が待ってるんですよ。
そりゃあ、ソワソワするのをオススメしますね。
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え?
オチですか?
◆
皆さん、
これから田町の【おにぎり屋】に予約しに行くでしょ?
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行くでしょ?
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私の術にね、
既に皆さん、【落ちてる】じゃないですか。
へっへっへ~。