その7 浮いたゴボ天
こうね、茶漬けを食うんですよ。
若い頃には特にね。
真夜中に
茶沸かし茶沸かし
茶漬け飯
沢庵添えて
鮭添えて
ね?
いい句でしょ?
こうね、独身の男がね、
夜中にね、
一人静かに茶漬けをかっこむ姿ってのも粋なもんですよ。
皆さん茶漬けに何を乗せます?
◆
私はね、
昨日は五朗さん所の天ぷらを乗せましたよ。
五朗さん所の天ぷらといえばね、ゴボウとニンジンなんですよ。
ええ、千切りにしたそれをね、粉に混ぜてね、揚げるんです。
それを紙にくるんで家にね、持って帰るんですよ。
きんぴらごぼうを揚げたみたいな感じてすね。
でもね、もちろん味は付いていない。
でね、ご飯の上にその天ぷらを三個、四個乗せましてね、
乗せてですよ、
丼の脇から茶を注ぐんですよね。
天ぷらに茶を注いではならねぇ。
でね、
でね、
分かります?
天ぷらにね、醤油を足らしてね、
かっこむんですよ。
天ぷらはいつもいつもシャキシャキしててね~
ゴボウとニンジンの歯応え。
たまりませんね。
◆
いや~
お腹がすいた。
皆さん、ちょっと待ってて下さいね。
これから五朗さんの天ぷら屋に行ってきますからね。
オチはそれからで。
いやぁねぇ、
売れきれたら困るんですよ。
◆
え?
困るって?
じゃあね、
これから皆で行きます?
いいですよ。
今日の寄席はね、
アタシで最後ですから。
◆
分かりましたよ、分かりました。
これから皆で行きましょうよ。
知らない人にはね、
私が道案内しますから。
◆
え?
オチ?
オチはって?
◆
いやいや、
落ちてはいませんよ。
浮いてますよ。
いやだねえ、
皆さん、落ちるどころか腰を浮かしているじゃないですか。