その1 ウルメの涙目
こうね、小ぶりなね、ウルメイワシを火であぶって一杯やる。
いや~
これぞ独身男の、
さみしい酒のアテですよね。
こうね、チビチビとね。
◆
ええ、ウチの妻の家が干物屋でね、
今年のウチのウルメは上物ですよ。
妻が言うから本当です。
こうね、焼いてね、
ご飯と共に頂いたりね。
もしくは茶漬けにしたりね。
しっかしね、
最近アッシは茶漬けに夢中でね、
このウルメの茶漬けがね、
またねオツなんですよ。
お江戸は朝しか米を炊かないでしょ。
でもね、夜には温かい飯が食いたい。
だから今日も茶漬けですよ。
しっかしね~
ほろ苦い茶漬けって他にあります?
ウルメってのは目が潤んでるように見えるから、ウルメなんですってね。
何で目が潤んでるんですかね。
泣きそうなんですかね。
しっかり、人間ってのは残酷だ。
ウルメさんの目に串を通して干しちまうんだから。
しかしね~
干したウルメは美味い。
◆
あとね、
私は懐にねいつもウルメを持ち歩くようにしてるんですよ。
妻と喧嘩したらね、これを持って逃げるんですよ。
番頭にお願いしてね。
楽屋に泊めてもらって、
ふてくされて、
ウルメと酒をチビチビとね。
人生って、ほろ苦いですよね。
◆
え?
オチ?
いやぁね、今度ね、
夫婦喧嘩の相談も受ける事にしたんですよ。
そう、夫婦喧嘩。
誰か相談したいですか?
おっとお客さん、
本当に手を上げなくていいですよ。
夫婦喧嘩してるってバレちまうんだから。
◆
そうです、
ここが笑い所です。
◆
いや、あちらの夫婦喧嘩している旦那は笑えませんか。




