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茶息⑤
はいはい、戻ってきましたよ。
番頭に師匠も慌ててましてね。
オチがないってね。
噺が良く分からないってね。
◆
知ってますよ。
まだ噺は終わっていないんですよ。
どうです?
ビックリしました?
寄席が終わって、落語家が戻ってきたなんてことがあります?
これだから落語はやめられねぇ。
でね、
どうです?
この【茶息】って噺は。
分かります?
どこがおかしいのか。
奥さんに家に帰って、どこがおかしいのか、お茶を飲んで考えて下さいってくだり。
分かります?
◆
実はね、奥さんって男ですよ。
◆
奥って名字のね。
皆さん、女性の奥さんかと思ってたでしょ?
主婦が買い物をしてるって?
だからね。
アッシはね、
この噺をした夜にね、
皆さんの勘違いした顔を思い出して…
こうね、
漬け物をかじってね、
ゆっくりと茶をすするんですよ。
今日の寄席は上手くいったなぁ~って。
【茶息】をはきながらね。




