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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
第五章 ●演者:染谷大吉
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茶息③

ではでは、

ここで【茶息】をひとつ。



皆さんね、

完全犯罪ってありますでしょ?


犯人が探偵から逃げ切るんですよ。


証拠を一切残さず、名探偵から逃げ切るんです。

それが完全犯罪。



じゃあ、落語で完全犯罪はできるんでしょうかね?



それでは、やってみましょうか…



いやぁね、奥さん。


好き嫌いってありますでしょ?

あれには随分と困りもんですよね。


本人も、困ってしまう。


アッシは味のついてあるご飯ってのが大嫌いでしてね、キノコご飯に、タコ飯、釜飯、ああいうのがどうも困ってしまうんですよ。


ご飯にダシが染みてるでしょ?

あれがどーもいけねえ。


そもそも白米に何で味がついているんだって言いてえ。

なぜ混ぜたって、なぜダシや醤油を入れて米を炊くのかいって。

なぜお米さんを白く染めるんだってね。


いやいや、分かりますよ。

そういう料理なんですから。

私もどうして嫌いなのか分かりませんよ。


分かりませんけど、どうしても口に入れたとたん、口の中が困ってしまうんですよ。

こう、ね、急に口の中にいろんな味がしやがる。


ちょっと待ってって…

思いません?

昨日までは味噌汁すすってさ、沢庵食べて、そして米を食ってたのにさ。

で、今日はどうだい?


キノコご飯?


米を食べたら、ダシやら、醤油やら、キノコやらがね…


そういうのが口の中に一気に来るんですよ。


こっちはビックリしちゃいますよね。

そいでもって白飯がないもんだから、こう、口直しも出来ねえでしょ?


こんな時にお茶があればいいんでしょうけどね、お茶もないんですよ。


何を食っても、どう噛んでも、ずっと味がするんですよ。

いや~お茶が飲みたいね~。


えっ?なんだい?


時間だって?


何の時間だい?


え?

これから噺をしなきゃならないって?


どうしてだい?


あんたは落語家でしょって?


ああ、そりゃあ落語家だよ。

ああ、そうだ、俺は落語家だよ。


だから、これから噺をする時間だって?

誰が決めたんだいそれは。


急にビックリするよ。


こうやって、しみじみと茶をすすってさ、ため息ついてさ、ほっとしている時に何でえ、困っちゃうよ。


しかし、今日のお茶はやけに美味いね。


分かった分かった、今出るからさ。

このお茶を持っていってもいいかい?


え、ダメ?


何で。


お茶を自分で持っていく落語家はいないって?


そいつは誰が決めたんだい?


いやいや、いいからいいから。

私は喉が乾くから、これをもう一杯入れてもらって持っていくよ。


寄席の最中に私が咳き込んでも困るだろう?


しっかし、このお茶は美味いね~


でね、この噺にでてるくるお茶がこれさ、奥さん。


でね、奥さん、ちょっとこのお茶を買ってね、

この噺もウチに持って帰って、お茶をすすりながら考えてみてくだい。




どこかおかしくありませんか?




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