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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
第五章 ●演者:染谷大吉
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茶息②

そもそもこの噺の始まりはね、

寄席にね、

遅刻したんですよ。


ただの遅刻じゃなくて大遅刻。


目が覚めたて、空を見たらね、どうやら昼が過ぎてるらしい。


でね、寄席に向かうんですよ。


午後の部がありますからね。


で、歩きながら思うんですよ。


もしかして、宮本武蔵は寝過ごしたんじゃないのかってね?


いやね、佐々木小次郎と巌流島で戦いましたでしょ?


遅刻して、あげくに二刀流ではなく、船のイカダで勝ったって噺。


ええ。

あれって嘘ですよね。


寄席に着いてね、

笑って済ましてもらおうと思ってね。

師匠の前でこう言ったんですよ。


【佐々木小次郎、敗れたり!】ってね。


皆、ビックリしてね、ポカーンとした顔をしてるんですよ。


ええ、

頭にハチマキしてね、

イカダを借りて寄席に行きましたからね。



まぁ、アッシもまだ若かったですからね。



え?

それからどうなったって?


それからね、

誰も何も言わないんですよ。



午後の寄席か終わってね。



ふと思ったんですよ。


あれ?


今日は休みだったよなって。



というか、落語家が風邪をひきましてね、一人欠員だったんですね。


これも私の演出なのかと番頭は思ったようでしてね。


ええ、その日の落語はウケにウケましてね。


番頭がね、

落語が終わった時にね、珍しく饅頭をくれたんですよ。



後でね、

師匠にね、

【何かすみませんでした】って言ったらね。


師匠もね、

【驚いてしまってね。何がしたいのか分からない。上手く返せなくてすまなかった】ってね。



もうね、グッダグダですよ。



皆さん笑いますけどね…


もうね、

美味いのか、

不味いのか、

そもそも味すら分からない。



でね、

風邪をひいた落語家にもね、

後日ね、

【兄さんすみませんでした】ってね、

泣くんてすよ。


泣きたいのは私だよ。



それから何日か経って師匠に呼び出されましてね。


こう言われたんですよ。



あの日の【獅子がしら】良かったよ。

よく分からないけどウケてた。


あの日のアンタは、

よく分からなかった。


だからね、

こっそり舞台の袖でね、

アンタを見てたってね。



よく分からなかったけど、

よく笑うお客さんとアンタを見てたらね…


なぜか枯れた瞳から、涙がこぼれ落ちたってね。





それから師匠にね…言われたんですよ。




【真打ち…やるかい?】ってね。




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