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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
第一章 ●演者:染谷大吉
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その3 大吉と大福

どうして私が【噺家】やね、

【相談屋】になったかって?


よく外でね、きかれるんですよ。

ええ。


う~ん。

困った噺なんですけどね。


気になります?


いや~、私は頭が良くてね、ここいらの長屋では皆、将来はお医者さんになるって噂だったんですよ。


それでも噺家になった…



大吉、大福を買ってきておくれ。


なんだい母ちゃん。

え?

大福?


そうだよ。

父ちゃんが腹が痛いからって、これから有名な先生が来るんだよ。


え?

ウチはお金がないから、

ないから?

美味い大福を先生に食べてもらって納得してもらう?


じゃあ、買ってくるよ母ちゃん。



どうしたんだい大吉。


なんだいこの紙切れは。


え?

大吉?

おみくじ?


馬鹿だねえこの子は。

アタシは大福を買ってこいって言ったんだよ大吉。


おみくじを買ってこいとは言っていないよ。


え?

大吉を買ってきた?


いやいや、大吉ってのはアンタの名前だろ?


もういいよ。

とりあえず、残った銭を返しておくれ。

おみくじよりも、あそこの大福は高いんだから。


え?

なんだって?

何々?

大吉はめったに出ないから、それ相応の値段がした?


いいよ、いいよ、分かったよ。

時間もない。

じゃあ、このおみくじを先生に渡すしかないじゃないか。

先生も大吉だと分かったら、少しは納得してくれるだろうさ。



こんな感じですよ。

私は普通のおみくじ買ったんですよ。


高い大福を買わずに、残りのお金を懐にしまったんですよ。


そして、後で母ちゃんの財布に戻した。


凄いでしょ?

これぞ【完全犯罪】


息子の大吉は馬鹿だったんだって、医者に大吉のおみくじを渡しておしまい。


親孝行でしょ?私は。


へっへ~。


ちなみに、後でお医者さんがおみくじ開いたらね、小吉だったってウチに来たんですよ。


そしたらね、母親が言うんですよ。


ウチの息子は大吉だってね。



そう、ここが笑い所。



つまりね、最後まで追跡を逃れる口上、つまりは【言い訳】を用意してある。



これはね、お金がないときに、母ちゃんにこれを演じようって作った噺なんですよ。


母ちゃんにね、

馬鹿な母親と、馬鹿な息子をそれぞれ演じようって言ったんですよ。


私って凄いでしょ?


へっへっへ~。


その日からね~

私はね。

誰に頼まれるでもなく、噺家になったんですよ…




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