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【長屋小噺】 三分間のメロンソーダ  作者: 長屋ゆう
第三章 ●演者:染谷大吉
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その5 トロロに白雪①

なぁ、山川の爺さん。


ここのトロロ蕎麦は一味違うって?

噂できいたよ。


へいへい、そこいらでは食べれませんよ。


本当かい。


どう違うんだい?


旦那、それは秘密ですよ。

こんな小さな屋台で商いをしてるんだ。

名物の秘密は教えられませんよ。


そうかい、そうかい。

じゃあ、そのトロロ蕎麦ってのを頂こうじゃないか。


あいにく、今日は品切れなんで。


そうなのかい?

長芋は八百屋で売ってたけどな。


いやいや、名物ですからね、簡単には作れないんですよ。


そうかい。

じゃあ、普通の蕎麦をくれ。


へい、汁蕎麦でいいですかい。


あたぼうよ。

ダシに醤油、薬味はネギに一味ってな。

ここには一味があるかい?


へい、ございます。


じゃあ、それを頂くよ。



また来たよ。

最近、冷えてきたね。


あらトロロ蕎麦の旦那。

ようこそ。


覚えていたのかい?


ええ、蕎麦を美味そうに召し上がってくださいましたからね。

覚えてますよ。


で?

今日はトロロ蕎麦はあるのかい?


いや~ないんですよ。

最近、気に入ったトロロが出回らなくて。

他にも色々とそろわない。


そうなのかい。


じゃあ、今日も汁蕎麦をくれ。



年越し蕎麦を食いに来たよ。

今日はお客が多いね。


へい、旦那。

年越しですからね。

そういえば、今日はトロロ蕎麦ありますよ。


へ~本当かい?

じゃあ、それを頂くよ。


へい、これがトロロ蕎麦です。


なんだい?

普通の汁蕎麦じゃないか。


ええ、そうですよ。


トロロ蕎麦は?


ほら、今降ってるじゃないですか。


降ってる?


雪ですよ。

冬にね、雪を見ながら、寒さの中で蕎麦を食うのが一番美味いんですよ。


それにね、こうも寒い中、トロロを入れたら、汁が冷めてしまうでしょ?


確かにな。

汁が冷えないトロロ蕎麦か。


値段は変わりませんから。


しっかし、今晩は冷えるねぇ。

ズ~ズ~

ジュルルルル~

は~美味いね~

口からもトロロみたいな息が出てらぁ。


ウチのトロロ蕎麦、美味いでしょ、旦那。


あぁ、いつにも増して美味いね。


また、お越し下さい、旦那。



あのね、皆さん。


今日、一気に山川の屋台蕎麦に行かないで下さいね。


冬にね、この噺をすると、皆ね、こぞって山川の屋台に行くんだから。


あそこの爺さん、腰が悪いからね。

大変なんですよ。


ただし、蕎麦には、しっかりと腰がありますよ。


最近ね、息子が蕎麦を打ってるらしいんですって。

息子はしっかり店を継いでね。

ええ、屋台じゃなく店ですよ。


屋台は爺さんの老後の趣味ですからね。


今では店舗を構えてますから。

あちらへもどうぞ。




なつかしいね~

あそこの店は屋台から始まりましたからね~




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