その3 カバと馬鹿
カバって動物がいるって本に書いてあるんですよ?
こうね、口が大きくて目が小さくて。
こ~んな大きくて、太っていてね。
何でもね、普段は水の中で暮らしているんですって。
え?
知ってるって?
じゃあ、噺がはやい。
◆
いやね、
最近、思ったんですがね。
アッシの口は小さい、
目は大きい、
それに、こんなに痩せている。
カバと真逆でしょ?
だから馬鹿なんじゃないかねって。
馬鹿は風邪をひかないって言うでしよ?
確かにそうだ。
風邪をひいたことがない。
いや~
困りません?
本当に困るんですよね。
でも、よくよく考えるとね。
じゃあ、カバは天才かって話ですよ。
今度ね、カバにさんに話をしてね、落語をしてもらおうと思うんですよ。
きっと素晴らしい落語をしてくれるんじゃないかって。
え?
カバはしゃべれない?
いやいや、そんな馬鹿なって。
いやいや、バカじゃありませんよ。
カバですよ。
しゃべれないフリをしているだけなんですよ。
私と真逆なんですから。
◆
ただね~
この馬鹿は近くにいますけどね。
カバは遠くアフリカまで行かなきゃならないんですよ。
◆
残念ですよね。
じゃあ、私の落語をきける皆さんは幸せですね。
良かった、良かった。
◆
さて、皆さんに質問なんですが。
この噺に出てくるカバは、どんな噺をすると思います?
◆
そもそも、この噺のオチ、分かります?
いや、ちょっと難しかったですか?
◆
じゃあ、
分からない方は手を上げて下さい。
別に恥ずかしくなんてありませんから。
手を上げない人にはオチをきいてみましょう。
◆
いやいや、皆、分からないですか?
◆
いやね、さっき落語家達と賭けたんですよ。
寄席で全員の手を上げさせる事ができるかってね。
◆
もちろんオチなんてありませんよ。
皆さん、ありがとうございます。
たんまり儲けたんで、土曜の寄席代は
安くしておきます。
是非、皆様お越し下さい。
受付で【カバ】と言って頂けたら安くなります。
知らない人にも教えてあげて下さい。
◆
あと、注意してくださいね。
受付で【バカ】って言ったら、番頭が怒りますから。
そう、そう、
ここが笑い所ですなんですよ。
これにて、これにて、どうぞよしなに。
◆
楽屋にて。
◆
いや~疲れた。
噺を曲げるのが難しいったらありゃしない。
やい、正之助。
今度の寄席は大入りだよ。
【風鈴金魚】を、
あれだけ練習しただろう?
物怖じせずにやってごらん。
そしてね、皆さんにしっかり名前を覚えてもらうんだよ。




