17/172
その1 海老と穴子
なぁ、大将。
この油で揚げた車海老、真ん中に火が入っていないよ。
火が入っていないなら、調理代は半分しかしか頂かないよ。
さっきの穴子は、しっかりと火が入ってたよ。
え?
これが海老の本当に美味い食いかただって?
確かに…確かに美味いね。
オメエさん、散々研究しなさったね。
へ~そうかい。
関心するね。
って言うとね、皆が海老を頼むんだよ。
皆が食べ終わった頃にね、この噺をするのさ。
何々?
今度、天丼を作るって?
なんだい天丼って。
何々?
揚げた海老に穴子に?
それを丼飯の上に乗せて?
乗せて?
甘辛いタレをかけてかっ込むって?
本気かいそれは。
凄いね~
え?
口直しに揚げた獅子唐に、味噌汁に沢庵も付くのかい。
こりゃ~困ったね。
今度はそれを食いに来るよ。
◆
そんな噺をして帰るんですよ。
宣伝料はもちろん頂いてますからね。
えぇ、頑張りましたよ。
◆
いえね、私は噺もしますがね、
近隣の相談屋というか宣伝屋なんですよ。
今日は八百屋のタケノコが美味いとか、ここの天麩羅は美味いとかね。
誰かの役にたたねぇとね。
◆
それじゃあね、これから皆さんの商いの相談を受け付けますよ。
もちろん有料でね。




