後書き 【漆の時そば】
え~
宗形です。
漆ですか?
俺と同い年だよ。
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ああ…
子供の頃から無類のそば好きだよアイツは…
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趣味が高じてね、
そばの屋台をやったりね、
子供達に読み書き【そろばん】を教えてた…
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初代は凄すぎただろ?
それを見てたんだろうよ…
どうして貧乏農家の次男坊が…
これだけ人に愛されるかってね…
不思議だったんだろう…
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しっかしね…
ここの地域では…
漆といったら神様だよ。
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初代同様、
皆から尊敬されてる。
特に子供にね…
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アイツは【そろばん】片手にね…
子供に読み書きそろばんを教えやがる。
しかもタダでね…
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でもね、
子供達の両親は申し訳ないからって差し入れするのさ…
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八百屋は大根…
魚屋はアジ…
着物屋は、ほどけた着物をタダで縫う…
いつも漆の周りにはね…
人が集まってたよ…
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そうだね…
漆には【ツヤ】がある…
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初代は分かっていたのかね…
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それで漆はどうなったと思う?
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なんと藩のね…
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【相談役】に選ばれてしまったのさ…
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殿様達も庶民の生活を知らなくちゃならないだろ?
だから漆を、城に迎え入れるのさ…
呼ぶんじゃないよ…
迎え入れるのさ…
庶民の噺をききたがる…
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そして政治の相談をするのさ…
藩の財政を漆に相談する…
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でね…
わずか18才でね…
初の【相談役】の役職さ…
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凄いだろ?
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【相談役】になってくれって頼まれた時…
漆は何て言ったか分かるかい?
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受けてもいいが…
私はまだ18だ…
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18数えても…
まだ蕎麦は茹で上がらないよってね…
◆
これぞ漆の【時そば】です。




