その8 纏い三千②
番頭の宗形です。
◆
そうですね、
【真打ち噺】ではありませんが…
これが、染谷宇刻の【代表作】。
【纏い三千】です。
◆
分かります?
◆
【死ぬまでに人間がやらなくてはいけない事が沢山ある】って噺です。
◆
そう…
戦後の混乱期に、
十三代目は犯罪を見逃さなかった。
◆
焼け野原からね、
宇刻さんと私達は寄席を作った。
そして宇刻さんはね、
【相談屋】を寄席の隣に構えましてね、
信頼できる従業員を雇い店を構えた。
寄席から帰ると噺を受けた。
◆
そう、
町の噂を集めて、
常に周りに気を配ってた。
◆
ちなみに【纏い三千】の構想はね、
初代の【おでん噺】なんですって。
◆
ええ、
今でも【相談屋】はやってますよ。
規模は小さくなりましたが、
インターネットの時代でもね、
正解は人に会ってみなくちゃ分からないんですよ…
まぁ、
時代は変わりましたからね、
法的に難しい噺は、
なじみの専門家にお願いしてます。
◆
しっかしね。
【纏い三千】をやった後にはね、
会場が静まりかえるんですよ。
◆
噺が終わるとね…
会場はシーンと静まりかえってね…
宇刻さんが、
鵺のようにね…
静かに笑うんですよ…
◆
そりゃあね、
皆…
震えますよ…
◆
皆ね、
この土地は【治安がいい】って噂でね、
この地に来ますからね…
◆
皆さんね、
ここで分かるんですよ…
犯人が…
◆
だってそうですよ…
宇刻さんがね…
【頭目】がね…
犯罪を見逃さない人がね…
◆
目の前にいるんですから…