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名も無き物語(仮)  作者: 如月彰
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少女たちの日常。


<藤宮未来>


未来みく先輩、テストの結果どうでした?」


放課後の生徒会室で、後輩の椎がそんな事を聞いてきた。


「そういう椎はどうだったの?」


「え?あー…ケアレスミスで……、その、三位でした…。」


普通に考えれば学年三位というのは決して悪くはない。というかこれで凹んでいたら贅沢と言うもの。

だけど、椎は生徒会の副会長、そして時期会長だった。


「まあ、偶にはそんな事もあるんじゃない?」


「うう…、トップで交代したかったんですけど…。…で、未来先輩の順位は?」


「未来は学年トップだよ。」


「5教科の総合得点が496点、…未来は中々崩れないよねー。」


幼馴染の天江蜜柑と水瀬杏が、私の点数を暴露しながら生徒会室に入って来た。


「それで椎の点数は?」


「…482点でした。」


「十分高いじゃない!贅沢すぎー!」


椎の点数を聞いて、ぶーぶー言う蜜柑。


その様子を眺めていたもう一人の後輩――神宮寺繭が椎に話しかけた。


「別に気にする必要ないと思うんだけどね?未来先輩の代わりをやるっていうのはそういう事じゃないんだし。」


其の言葉に私達三年メンバーがコクコクと頷く。


「このペースで行けば、同じ高校、大学って進めるんだし、多少のミスぐらい気にする必要ないよ。」


と、言ってみたけど椎は何やら考え込んでいる様子だった。


「まあ、今は生徒会の仕事を早く終わらせよう。それで帰りに何処かでお祝い兼残念会でも…。」


「杏…、それ校則違反だから…。」


「何を今更。」


「うん、今更だよねー。」


私の呟きに、杏には鼻で笑われて蜜柑がそれを追随、そして椎と繭もコクコクと頷いていた。


「はぁ、分かったよ。じゃ、早く終わらせよ?」














「「お姉ちゃん達おかえり(なさい)!」」


家に戻ると、実妹と椎の妹が出迎えてくれた。


「ただいまー、翠、美衣。」


「翠ちゃんこんばんわ、美衣帰るよー。」


「はーい」


椎の芳賀家は共働きで、両親の帰りが遅い。なので、姉の迎えがあるまで美衣は我が家で保護されている。

という名目で翠が毎日連れ込んで、一緒に遊んでいる。


まぁ、あちらのご両親にとっても都合が良いんでしょうけど。


「じゃあ、また明日ね!椎、美衣。」


「はい、先輩。失礼しまーす。」


芳賀姉妹を見送った後、私はゲームをしている翠に問い掛けた。


「翠、お風呂の掃除はしてくれた?」


「あ…。」


ヒクヒク


「またなの?後でお仕置きね。」


「えー!?」


「えーじゃない!もう、掃除しながらお風呂に入るよ!ゲームしてないでさっさと脱ぎなさい!」


「うぇぇ!お姉ちゃんのエッチー!」


・・・・・・・・




「ふう…。」


二人で手分けをして、何とか何時もの時間までにお風呂に入れた私達は、のんびり湯船に浸かっていた。


「そろそろ、お母さん達が帰ってくるね。」


「そうね、そろそろあがりましょうか。」


そう言って、一度伸びをすると翠は何か言いたそうな顔をしていた。


「…何?」


「…お姉ちゃんって、本当にむにゅ、へぶ!?」


「うっさい!大体アンタがでかすぎんのよ!?小学生でしょ!?もっと慎ましい胸をしておきなさいよ!」


私の妹はまだ小6だというのに、ブラが必須になる程成長していた。私?聞くな!


「私はお母さん譲りだもん!お姉ちゃんが無乳なだけでしょー!」


そう、うちの母もかなり大きいというか藤宮一族の女性は皆胸が大きかった。

だけど、其の中で私だけが成長しなかった…。

身長はそこそこあるのでスレンダーなモデル体型という事で、私は後輩の女の子には人気がある。

いや、私はお姉さまとかになるつもりはないので、そういう人気はいらないんだけど…。


「…お姉ちゃん、痛いんだけど…。」


気が付いたら翠の胸をこねくり回していた。


「くっ!高校に上がったら絶対に巨乳になってやるんだから!」


私の決意を聞いた妹は呟く。


「後半年ちょっとでなんとかなるとは思えないけど…。」


なんとも言えない表情で、姉を見つめていた。




――――――…












<布良真帆>



真雪先輩が消えてから一ヶ月が経った。

先輩を突き飛ばしたおばさんはその場で拘束されたらしい。

ただ、消えた理由が説明出来ない上に、先輩が見つからない事からおばさんは解放されてしまった。


『私にこんなことをして、アンタ達絶対訴えてやるからね!』


と、警察の人に捨て台詞を吐いていたらしい。


「だから、捕まったんだね。」


「えっと、捕まった理由は真雪先輩を突き飛ばした傷害罪と、大勢の前で悪口を言っていた名誉毀損だけど?」


幼馴染の綾香の発言に、訂正を入れる私。


「そっか。でも、真雪先輩何処行っちゃったんだろう?」


「うーん。」


先輩の行方を考えていると、教室の扉が開いて長い金髪がとても似合う少女が入ってきた。


「あ、沖田先輩!」


「リア先輩、こんにちわ。」


「うん、こんにちわ。二人とも帰る準備は出来てます?」


「はい。」「はーい!」


真雪先輩が消えたあの日から、リア先輩は毎日送ってくれるようになった。

リア先輩は真雪先輩がなんらかの事件に巻き込まれていると思っているらしい。

それで、剣術や武術の心得があるリア先輩が私達の護衛役を買って出てくれた。


リア先輩はクォーターだけど、明治初期から続く剣術家の直径らしい。

聞いた話だと先輩の御祖父さんが若い頃に外国へ留学していたらしくて、

そこで知り合った女性と結婚をして、日本に戻って来たんだと言っていた。


「じゃ、私は帰りますね。」


私達を家まで送ったリア先輩は、そのまま踵を返して帰っていった。


「沖田先輩ってカッコイイよね。」


「そうだね。」


真雪先輩とは違う格好良さがリア先輩にはある。


例えるなら騎士…いや、侍かな?


そんな事を考えながら、私達は家に入った。









夕食が終わって、部屋で寛いでいるとトイレから綾香が戻ってきた。


「私、此処に居ない方がいいのかな…。」


部屋に入るなり、いきなりそんな事を言い出す綾香に私は困惑していた。


「え?いきなりどうしたの?」


「その…。」


話によると、お父さんが綾香の顔色を窺っていたという事だった。


「多分それは、綾香の心配をしているだけだよ。だから気にしなくていいよ。」


「…うん。」


力無く返事を返す綾香は、とても寂しそうだった。


私達の父親は同じ職場の同僚で、綾香の白石家とは家族ぐるみのお付き合いだった。

去年、綾香のご両親が事故で亡くなるまでは…。


行く当てもなく一人残された綾香は布良家の養子として引き取られた。

元々家族の様に付き合っていたのだから、そこは可笑しくはなかった。

ただ…、お父さんが時々何かを考え込む事が多くなって、…あまり笑わなくなった。


お父さんは何かを知っているのかも…、


「綾香!ゲームしよ!」


私は疑念を振り払うように明るく振舞っていた。




――――――…










<金井詩帆>



足元まで伸びた長い髪、人形の様に整った美麗な顔。黒いゴスロリ衣装に身を包んだ少女は、優雅に町を歩く。

年は10代前半ぐらいだろう、街往く人達は皆足を止め、少女に見惚れていた。


そして、彼女はコンビニに入店し、紅茶のペットボトルを2本持ってレジに並んだ。


「えっと、KOOLブーストの8mを二つ。」


「はっ…?」


少女の注文に固まるコンビニ店員。

そりゃそうだろう、目の前の少女は140cmもない子供なのだから。


店員が困惑していると、少女は財布の中からカードを取り出した。


「成人してます!」


そう言って少女は車の免許証を提示した。


金井詩帆22歳、所謂合法ロリだった。





「うーん、この体は可愛い服を着る時は便利なんだけどねー…。」


酒や煙草を買う時に毎回年齢確認をされるのは煩わしい。でもまあ20台前半じゃどちらにしても聞かれるだろうけど。


それよりも、深夜にコンビニ行こうとするとちょくちょく補導されそうになるのは嫌なのよね…。


部屋ではジャージで過ごしている私だけど、外出の時は例え近所のコンビニでもゴスロリを着ていく。これはもう、私のアイデンティティのようなものなので、手を抜くわけには行かない。


そもそも、ゴスロリ衣装の女子高生作家としてラノベ界にデビューした私は、今でも其れを売りにしている。

もう高校生どころか大学もそろそろ卒業なんだけど…。


「さて、そろそろ仕事しないと…。」


仕事を進めようと机に向かうと、携帯が光っていた。


「ん?お母さんか。…何?」


『詩帆、仕事は順調?』


「うん、お母さんに妨害されてなければ。」


『相変わらず減らず口ね…、まあいいわ。アンタに電話したのは黒崎さんちの子の件よ。』


「美星ちゃんと美夜ちゃん?」


『そう、やっぱり日本に残りたいって言っているらしくてね、でもあの子達ってほら、…大人を怖がるじゃない。」


「あー………ねえ、お母さん?もしかして…。」


『あら、察しが良いわね。って事で引き受けたから頼むわね!』


「ちょお!?」


プツップープープー


「あんのクソおやああ!!!」









数日後、出国を控えたご両親と一緒に美星ちゃん達がやって来た。ちなみに、バカ母も一緒だった。


「詩帆ちゃんすまないけど…、娘達をよろしく頼むよ。」


「え、ええ。」


ご両親に頼まれて、硬い笑顔で返事を返す私。


「アンタ、まだそんな格好してるの?年を考えなさいよ。」


「うっさいわ!」


バカ母とのバカなやり取りを微妙な顔で見ている黒崎夫妻。


「あ、心配しなくても良いですよ!私の仕事は自宅勤務なので二人の事を見る時間は十分ありますし、大学の方も卒業試験をパスして後は卒業式だけなので!あ!お時間大丈夫ですか?」


「おっと、そろそろ出ないと不味いね…。急な話で本当にごめんね!」


「詩帆さん、娘達を御願いします!」


そう言って、ご両親は慌しく帰っていく。


「ねえ、詩帆。」


「…何?」


「儲かってるんでしょ?ご飯奢っ「帰れ!」」


馬鹿なことを言っている母親を、私は全力で追い返した。




その夜。


「美星ちゃん!美夜ちゃん!滅茶苦茶似合うじゃない!?」


美星ちゃんと美夜ちゃんにお手製のゴスロリ衣装を着せてみた。


「え…っと、私こういうの着るの初めてで…。」


「に、似合ってますか?」


中一と小6の小柄な姉妹なだけあって、私の衣装が殆ど着れたので彼女達は私の着せ替え人形になっていた。


「次、此れ!此れ!」


「し、詩帆ちゃん、顔怖い…。」


「お、落ち着いてください!」


うん!やっぱり可愛い子には可愛い衣装よね!!


この後、私は満足が行くまで二人の姿を堪能していた。







藤宮未来と其の仲間たち、布良真帆と綾香、リア…そして、詩帆達。

近い未来に起こる数々の事件、其の当事者…中心人物となる事を今の彼女達は知る由も無かった。



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