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名も無き物語(仮)  作者: 如月彰
21/24

プロジェクト…

おひさしぶりです。徐々に再開していきます。


 翌日の早朝、まだ夜明け前だと言うのに、体に違和感を感じて俺は目を覚ましてしまった。何だろう?と思って重い瞼を徐々に開けていくと目の前に衝撃の光景が写る。


「うっんぅ…、ふぅ!」


 顔を俺の胸に押し付け、声を押し殺しながら、俺の体に自分の体を小刻みに押し付けているユニがいた。


 いや、こいつマジでナニしてんの!?こっちはなるべくそう言う目で見ないようにしてるってのに!


「ふわぁ…、ん!」


 一際、大きな声が漏れ出た。ユニの体はプルプル震え、やがて力尽きた様に脱力する。


「……気持ち良かったか?ユニ。」


「ふぇっ!?」


 俺が声を掛けると、ユニはビクッとして、慌てて顔を上げた。


「~~~~!?」


 そして、声にならない悲鳴を上げて、耳まで真っ赤になっていた。


 暫く、そんなユニを見つめていたが、彼女は慌てて取り作り始めた。


「その!クウさんに…其の……。」


 ユニは恥かしさからか、俯きながらぼそぼそと喋るが、俺の内心は相当切羽詰っていた。


 そう、以前の寝起きに食らった下半身への攻撃もあの時は大概驚いたが、今回はコレは其の比ではなかった。


 何しろ今のユニは完全に素っ裸だ。昨日の夜の事が原因で着替えさせずに寝かせてしまった俺にも非がある訳だが、まさか、朝起きたら擦り付けられてるなんて想像も出来ねえよ!


 しかも、今は寝起きな訳で言わずもがなと言う状態だ。其の上でユニがぐっしょりな状態で擦りつけていて…、コレ多分、俺も…?うがあ!?寝てたなんて勿体ねえ!?っじゃなくてええ!


「…ゆ、ユニ?とりあえず着替えたら如何だ?」


 正直この状態が続くのは俺にとって拷問に近い。さっきからユニの匂いと柔らかさで本能さん苛烈に攻め立ててきて、理性さんが崖っぷちに追い込まれているんだ。


「え!?あ、その、…クウさんのコレ…大丈夫なんですか?」


「!?」


 はうわ!?


 急な刺激を受けて慌てて腰を引く俺。マジで崖から落ちそうなんですけどー!?


 本能さんがユニを抱けって、ああもう!この子は手出したら不味いだろ!?いや、この際ユニの年齢とかそういうのは如何でもいいんだ。問題は…。


「だ、大丈夫だから!早く着替えてきなさい。」


「はい……。」


 名残惜しそうに、ベッドから抜け出ていくユニ。で、俺は俺でそんなユニの姿をバッチリ見てしまう。


 不味いー!と、とりあえず、処理しなくては!?でも、何処で!?


 さっきからズキズキと痛いぐらい張っていて、まともな考えが中々出来ない。


 それでも気合で、反対方向に寝返りをうち、何とか心を落ち着かせていく。しかし、早々うまく行く筈もなく、着替えるユニの衣擦れ音で余計悶々としてしまう。


 ユニは、この世界の住人なんだ。でもって、俺は何れ地球に戻る訳で、たとえヤッた責任を取って彼女と結婚をしたとしても置いていってしまうリスクがある。


「うぐ…。」


 しかし、しかしだ。此処まで積極的に来る子を俺は拒み続けられるのか?正直さっきなんて、後ちょっとで押し倒していた所だぞ。


「うっ…。」

 

 先程の光景、そして、以前の事。彼女が求めている事は俺に喜んで貰う事だとは思う。悦び違いだが。


 そうなると、ある程度は受け入れた方が良いのでは?正直な話、もう我慢は無理です。理性さんは殆ど落ちてます。


「ユニ、ちょっと…。」


 俺は起き上がって、まだ着替え中のユニを呼び寄せる。


「はい、何でしょうか?きゃっ!?」


 俺はそのまま彼女を抱き寄せる。そして。


「さっきみたいなのは無しにしてくれないか?」


 俺がそう言うと、ユニは泣きそうな顔で俺を見上げる。だから、俺は話を続けた。


「ユニがしたいのなら、まぁ、本番は流石に無しだけど…。」


 いや、可能なら俺だってヤりたいけど。


「でもな、俺なんかが相手で本当に良いのか?」


 そう問い掛けると、ユニは泣きそうな表情から一変して嬉しそうな顔になって。


「勿論です、私、クウさんの事好きですから。」


 ガン!と来た。


 彼女がまったくいなかったって訳ではないけど、付き合った期間やその内容をを考えれば、俺はほぼ年齢=彼女いない暦と同じだ。


 そんな俺が、ユニみたいな美少女から好意をはっきり口に出して貰えるなんて、嬉しくない筈がない。


 …贅沢を言えば、ユニは俺の理想とは大分違うタイプなんだけど。


 どうせロリ美少女と付き合えるなら、ユニみたいな素直な子よりも一癖も二癖もある何処か残念なクソガキちゃんの方が好きなんだよ俺、いや、実際付き合うならそう言うタイプ相手は普通にイラつくか、あれは二次元だから許される事だろう。


 チラリとユニの顔を見る、彼女は黙って俺を見つめている。


 本来は手を出さない方が、いざ別れる事になった時にお互いダメージが少ないと思っているんだが…、ユニの気持ちを無下にするのも…。何とかヴィシュヌに頼んでユニも地球へ連れて帰るか?つっても、ユニも知らない世界じゃ不安だろうし、断られるかな?


 そもそも、今、事を始めるとしても、その前に俺の事について説明した方がいいよな?それで諦めてくれる可能性ある訳だし。……そうなったら、それで残念ではあるけど。


「ユニ、先ずは真面目な話をさせてくれるか?」


「は、はい!」


 直ぐには信じて貰えないだろう、もしくはおかしな奴だと思われるかも知れない。だけど、此れは伝えないといけない事だ。


 そう考えながら、俺は軽く深呼吸をする。そして、ユニの顔を真正面から見て、言葉を紡いだ。


「俺はこの地の人間じゃないんだ。だから近い将来、故郷に帰る事になる。」


「私も付いて行きます!」


 悔い気味に答えるユニに、俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。考慮する事すらしないとは。


「いや、言葉も通じないし、文化もまったく違う場所だぞ?大丈夫なのか?」


「……それでも一緒に行きたいです。」


 ユニは悲しげな表情のまま、俯いた。


「私にはもう帰る場所もありません、それに私は半魔人だったんです、忌み子です。今クウさんに捨てられても、行く当てもありません。」


「別に捨てたりはしねえよ。俺を何だと思ってるんだよ。」


 確かにヴィシュヌの返答次第ではどうなるかは分からないけど、俺個人としては捨てるつもりなんかない。そもそもユニは、この世界で唯一、俺が信頼を置ける仲間なんだ。


 と、そんな事を考えていたらユニは急に真剣な表情をして、俺を真っ直ぐ見据えて。


「私、出来ればクウさんとずっと一緒に居たいです」


「……そうか。」


 ここまで、はっきり言われちまったらな…。先の事は分からない、だけど、やれるだけやってみよう。


『ヴィシュヌ!聞こえるか?』


 ………………


 ………………………


 ………………………………


 反応なしか…、仕方ない、出来るだけ毎日呼び掛けてみよう。ただそうなると、何処までを許容範囲にするか…か。まあ、それよりも。


「もう少し寝るか。」


 何時の間にか理性さんが復帰して、鎮めてくれていたので俺は問題の先延…、いや先延ばしだな。其の為に今回は寝てしまおうと考えていた。


「あっ…。」


 ユニを改めて抱き寄せ、俺はそのままベッドに倒れこむ。


「……冷たい。」


 色々と台無しだった。


 俺は無言のままユニを連れてもう一つのベッド、つまりユニのベッドに移動する。


「あの…?」


 ユニは何かを言いたそうにしていたが、「もう治まったから、もう少し寝るぞ」と言って、そのままベッドに倒れこんだ。


 最初は色んな意味で戸惑っていた様子のユニだったが、一つ溜息を漏らすとそのままベッドに入って来た。


 そして、そのまま眠りについた俺達は、昼過ぎまで寝ていたのだった。



――――――――




 あれから2週間程が経った。未だにヴィシュヌとはコンタクトが取れていないが、結局ユニと俺は関係も持ってしまった。とは言え、本番までは行ってない、精々互いの処理程度だ。


「ふう…。」


 ベッドの上で煙草を咥え、ライターで火を点ける。未だに魔法が上手く発動出来ないので、煙草に火を点けるのはライターが必須だ。魔力は高い筈なんだがなぁ…。


「それにしても…。」


 ふと、横で寝ているユニを見やる。彼女は裸という訳ではないが、ほぼ下着姿だ。


「どっから如何見ても、事後だよな、コレ。」


 まぁ、ほぼほぼ正解な訳だが。一線を超えてないだけで、大体の事はしちゃったからな……。俺の意思が弱すぎた所為で。


「…と、今日はヴォルガから呼ばれてたんだっけ。そろそろ支度しないとな。」


 あれからも俺達は、ヴォルガ達から戦い方を学んでいる。ただ、魔法に関してはあまり芳しくはない。


 其れは先生役のレイラがユニの事を未だに怖がっているのが原因なのだが……。


 それでも、ユニだけは簡単な初級魔法を修得出来たので、今後の事を考えれば十分だと思っていた。


 そして約束の時間が来て、ヴォルガと合流した俺達は、何故かラズベール伯爵家の屋敷に招かれていた。


「よく来てくれた、クウ殿。ヴォルガから聞いているよ、隠密特化の術士だとね。」


「は、はあ…。恐縮です。」


 今俺の目の前にいるのは、ラズベール伯爵その人だ。つまりあんな夫人の旦那さんで伯爵家の当主だ。


 そんな人が何で俺を呼び出したのか?と考えていたら、成程、つまり隠密が必要な依頼だと言うことか。


「あの、俺じゃかった、私としてはあまり大胆な仕事はしたくは無いのですが…。」


 断ること自体大胆な行動だとは思うが、隠密で行う仕事なんぞ碌でもない仕事に違いない、俺はそう思っていたんだが。


「ふむ、何を勘違いしているのかは詮索しないが、今回頼みたい仕事というのは、救出依頼だ。」


「救出?」


 鸚鵡返しに聞き返すと、伯爵は一度頷いてから続きを口にする。


「そうだ、先日、この近くの海域に棲む海賊共が、友好国の使者を乗せた船を襲い、要人達が海賊共に人質として捕えられてしまったのだ。連中は身代金を要求して来ているが、それを払ったとしても開放されるかどうか…。」


「つまり、海賊のアジトに侵入して、要人達を救出して来いと言う事ですね?」


「うむ、本来ならば、海軍を派遣すべきなのだが…、我が領は軍備を狭まれていてな。十分な船と戦力を用意出来ないのだよ。」


 うわぁ、何処かで聞いた様な展開だな、というか、まんまプロジェ〇トAじゃねえか。軍備縮小の理由は政治的な話だろうな…。


「我々が乗る船と、要人達を乗せる船はご用意して頂けるので?」


「無論だ。船の護衛には腕利きを付ける。キミ達は要人の救出だけ、考えてくれれば良い。」


「依頼内容は救出とありますが、海賊の生死は不問と言う事ですね?」


「連中はかなりの規模だ。流石に討伐までさせる訳にも行かぬよ。」


 俺は頷き、依頼を了承した。少し前までなら、こんな危険な仕事を請けたいとは思わなかったが、今は受ける理由があった。


 依頼内容は要人の救出だが、海賊の生死は不問。つまり、上手くやれば大量の血魂を手に入れられると言うことだ。俺自身が受けられる力は微々たる物だが、ヴィシュヌに力が流れるのは都合が良い。アイツにはユニの事を頼まないといけないからな。


「クウ、何時出発するんだ?」


 屋敷を出た後、ヴォルガが聞いてくる。


「そのアジトの場所が、此処からどれぐらい掛かるか分からないからな。今日は準備に使って、明日の日中は休息。深夜、現地に着ければ…。」


「成程、分かった。夜襲は想定内だ。此方は根回しをしておく。」


 俺はヴォルガと別れ、ユニの待つ宿屋に向かう。


「……何か俺、こっち来てから人殺しばかりだな。」


 悪党相手とは言え、何だかな…。いや、まあ、魔物相手とか、出来る訳ないんだけどさ。


 猛獣どころか、普通の野生動物にすら今だ梃子摺る俺だ。魔物とかの相手をしたら間違いなく死ぬ。


「もっと、強くならないとな…。」


 だからこそ、今回はチャンスだ。上手く、奇襲と暗殺で切り抜けよう。殺せば殺す程。僅かにでも強くなれるのだから。


 こうして、俺達は海賊退治もとい、要人救出の依頼の為動き始めたのだった。


脳内で、あのテーマが流れ続けています。クウも転移直後よりは大分マシに動けるようになっていますが、流石にジャッ〇ーみたいな大立ち回りは出来ません。何時も通りこそこそ暗殺していきます。

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