異世界を近代化するには(第3回)
今回はイギリス産業革命期を支えた動力機についての話です。
産業革命という言葉を聞いて、多くの人が想像するのは蒸気機関が普及し、様々な機械を動かすようになった姿ではないでしょうか?と既に何回かこのシリーズで述べたような気がします。
しかし、実際に蒸気機関が普及するようになったのは産業革命期の終わりであり、その大半では別の動力機が用いられていました。異世界を近代化するにあたり、私は蒸気機関や電力よりも、この動力源が最も実用的だと考えています。
産業革命期には飛躍的に需要、供給の両方が拡大し、特に紡績業においては紡績機の改良が進むにつれて人力ではない大きな動力源が必要とされるようになりました。そんな中、生産量の増大を支えたのが水力です。
水車は古代より利用され、改良が重ねられたことにより産業革命期において最も実用的な動力源の1つになっていたのです。
蒸気機関に対して水車が勝っていた点は
1. 得られる動力が大きい(数倍~十数倍)
2. 古くから利用されてきたためノウハウの蓄積がある
といったところです。
1については意外だったかもしれませんが、開発された当初の蒸気機関では安全に大きな動力を取り出すことは難しく、結果として水車のほうが大きな動力を得られたのです。また、古くから利用されてきたため職人に技術の蓄積があり、製造や整備も十分に行うことができました。
異世界に動力を普及する際、それほど大きな産業はないでしょうから専ら問題になるのは2の方になるでしょう。中世を舞台とすることの多いなろう小説において違和感なく受け容れられる水車はまさに打ってつけです。
それでは、なぜ水車が後に蒸気機関に取って代わられたのかということについても解説しておきます。ある程度察している方もおられるかもしれませんが、水車最大の問題点は立地にあります。
水車から大きな動力を得ようと思うと、ある程度水流のある河川が近くになければなりませんが、そういった河川は人口の密集する都市部付近にはありません。市街地から離れると労働者の確保が難しくなり、都市の中にも作ることのできた蒸気機関はそこに優位性があります。
また、1つ1つの生み出す動力は小さかった蒸気機関ですが、水車と違っていくつも同じ場所に集中して作ることができます。これにより得られる動力の大きさもそれ程大きな問題にはならなくなってきたのです。
以上のように産業革命期の動力機について話をしてきましたが、重要なのは異世界に動力機を必要とするような大きな産業があるか、という点です。そういったものがなければそもそも動力機など必要なく人力で事足りてしまいます。奴隷を使ってもよいでしょう。
動力機はあくまで作業機を動かすためのものであり、それを使って何を動かすのかが重要なのです。
コロナ治まったらクロムフォード紡績工場行ってみたいね。




