勇者はやられる13
「うぇーっっ!!」
そう言って吐き出す事、既に何回目になるか。
どうやら生粋の王子様にはあのサバイバルな料理は口に合わなかったようだ。
食事中、急に顔を青くし体調不慮を訴えた王子をセイが神聖魔法で治療している。
そう言うと聞こえは良いが、ぶっちゃけただの回復魔法だ。
偉そうに「これより神聖魔法を執り行う」とか言い出して術を発動。
姉達は「まぁ。凄いですわー!!」「ステキです~」と目をキラキラさせていた。
因みに、ここは現在地移動中の馬車の中。
既に行程が詰まっているらしく、王子の治療は移動しながらとなった。
セイの神聖魔法とやらを浴びながら兵士達にタンカーで担がれる王子、そんな王子を姉達が祈るように見ている。
はっきり言ってコントにしか思えなかった。
まぁ、そのお陰でセイとレオは難を逃れたのだから怪我の功名だろう。
あの怪しいデザートまで辿り着かなかった事に盛大に感謝したい。
話は戻すが、何故馬車移動での治療かと言うと、王様が隣国に訪問の予定があり、その前に勇者パーティーに激励をする為だと言うのだ。
って言うか、神官だったら腹痛程度ならちゃっちゃと回復させろよ。
そう言いたいのを我慢して成り行きを見守る。
「いや~危なかった。私もヤバいと思って胃にバリアを張っていて良かったよ」
そう言ってセイはほっと息をつく。
胃にバリアって……。
そう思い今度はレオを見ると
「私は幼き頃よりよく山に一人で離されたからな、ある程度の生き物なら生でも大丈夫だ」
公爵家の家督がそれで良いのだろうか?
「しかし、それを思えばシーは凄いな」
レオが感慨深く俺を見る。
「あんな殺人的な料理を毎日平気で食べていたんだろう?」
思わず目が点である。
「いや……正直言えば、毎日俺が料理していたから大丈夫だ」
そう訂正しておく。
だって、あんな得体のしれない物を毎日食べていたなんて思われたくないからね。
「そうか。これからの旅で料理はどうしようかと思っていたが、シーに頼めば大丈夫だな」
旅の食事の安全は確保したぜ!と言うようにレオは俺を見る。
確かに……先程のレオの話からするとレオに調理を頼んだら生の素材が皿に並びそうだし、セイに調理を頼んだら精進料理 擬きが出てきそうだ。
あの馬鹿王子は論外。
今朝レオの事をパーティーのお母さん的存在と思ったが、それは違うと認識し直す。
どう考えても俺が苦労する為のパーティーにしか思えない。
だから俺は諦め半分で頷く。
そんな俺に腹痛に耐えながら王子が
「雑務は新人の務めだからな。誠心誠意 励むように」
と宣う。
こいつが一番手がかかりそうだ。
そう思いため息を吐いた。
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