勇者はやられる1
初のハイファンタジーです。
生暖かく見守って頂けたらと思います。
初回につき本日もう一話投稿致します。
宜しくお願いします。
俺は勇者。
名前はまだない。
何故なら俺は生まれたばかりだからだ。
右手に勇者を表す光の紋様が浮かんでいるが、生憎とその事実を知る者がこの村にはいなかった。
そう此処は良く言えば緑溢れる自然と調和した村。
悪く言えば世界の事など何も知らない位のど田舎。
そんな村の一応は村長の家に俺は生まれた。
………………一番末の子として……。
末の子の処遇というものは上の兄弟によって大きく変わる。
俺が生まれた頃には長男は父と一緒に村を治める事を勉強していて、おれの相手は主に次男のケイと長女のユリアだった。
ケイは結構喧嘩早くっておれの鍛練に役立った。
ユリアは何故か俺に料理や掃除を手伝わせる為に、知らず知らずサバイバルの経験値を積む事になった。
何せ田舎、食料も自給自足なのだ。
そんな訳で俺は計らずともレベルを上げる事に成功している。
俺に転機が訪れたのは16の春だった。
そう、魔王復活である。
魔王復活と共に直ぐさま王都で神託の儀式が行われ、魔王討伐の勇者の神託が下ったのだ。
王様の命令で右手に光の紋様がある若者(勇者)を四人探すと言うお触れが回ったのだそうだ。
残念ながら、そんなお触れはこの村には来なかったが、お触れを持った近衛兵が神託後半年を経てこの村を訪れたのだ。
大体が伝説の勇者の話になぞられたこの手の紋様は、それなりに判る者が見れば勇者の紋様と判るのだ。
つまり、生まれながらにして勇者だと判ると言う事。
故に勇者の選定は簡単に進み既に三人の勇者が見出だされていた。
だから、最後の一人がなかなか見つからず、王は各町を兵士に回らせたのだ。
だから、この村がこの国最後の村という事で王宮の兵士がやって来たのだろう。
勇者パーティーを引き連れて。
「この村に右手にこの様な紋様を持つ者はいるか」
高らかと宣誓のような声で村の中央広場でいかにも騎士風の男がそう叫ぶ。
自分より僅かに上に見える年格好の青年。
勿論紋様があるのだから勇者パーティーの一人である。
中央広間には今俺の他には5人の人間がいた。
鍛冶屋のボケた先代と、一応教会の神父、その隣に5歳と2歳の兄妹、そして、俺の姉の5人である。
一瞬皆が呆おけて聞いていたが、俺の姉が「あっ!!」と大きな声を上げた。
「シーの手にあるやつだ」
そう言った瞬間、その場の近衛兵の視線が姉へと集中した。
……って、俺がそうなんだけど……。
そう思っていると勇者パーティーが俺を弾いて姉に群がる。
一応姉はこの村では一番の器量良し。
都会の女には負けるかもしれないがここでは一番の美人さんだ。
俺 がそのシーなのに……完全に蚊帳の外であったのはその後の人生に過大な影響をおよぼす。
「お~い」
声をかけるが誰一人として俺の事を見てはいなかった。
王宮の兵士でさえもだ。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。